第33回 福富太郎(その三)
殺人犯ホステスを自首させた---福富氏本人が今、その「秘話」を明かす

 五月二日、久しぶりに福富さんと会った。北千住のハリウッドで。
 画家の大竹伸朗さんと伺ったのは何年前だったろうか。
 あい変わらずお元気そうで、頼もしい。
 四方山話をしているうち、事務所の壁に賞状が掛けられているのに気がついた。
 警視総監からの賞状である。
 福富さんが、そのときの逸話を明かす。

 殺人犯がね、ハリウッドの銀座店にいたんです、女の子が。

 私はテレビによく出てた時期があって、テレビ局の人たちと、銀座で飲んだりしていました。その日は、ある殺人犯の取材に行ったんですが、その事件というのは、女性が男を殺して埋めちゃった、というもの。どうしても気になるので、埋めた場所に近い旅館で女中として働きながら、毎晩のように拝んでたらしいんです、秩父の山、三峰でね。

 で、テレビのディレクターに取材してくれ、と頼まれて、その、男を殺したという女中を探すことになったんです。

 取材から帰ったその日、銀座の店に行き、マネージャーにきれいな子をつけてくれよ、と云ったら、今日入ったという子を連れてきた。京都出身だってね。テレビ局の連中が喜んで、「おうっ、京都のいとはんか」なんて変なこと云って、ちょっとおだててからね、他にはこういう殺人犯がいるとか何とか、そういう取材しろとか話していると、「私はね、殺人の現場見ましたよ」って女の子が云うんですよ、いとはんが。「あんたね、嘘云っちゃいけないよ。これは本当のテレビ局なんだから」って云った。そうしたら、「いや、ほんとうに殺しの現場見たんですよ」って。でもね、こっちは嘘だと思ってるから、「もうそんな話、こんな席でするもんじゃないよ」と。

 一夜あけてね、少し恐くなった。その頃うちの店には、警視庁のOBが十人くらい勤めていたんです。前科がある女の子とか、スタッフもいるからね。この商売、トラブルは避けたい。

 夕方、出勤すると、警察官OBが腕組みしてね、じょごじょご話してる。

「何かあったら、あなたたち、すぐに処置してくださいよ、そのために来ていただいてるんだから」と云ったんです。

 そうしたらそのOBの一人が、週刊誌見せてね、京都で愛人を殺して池の中に沈めて、いま全国指名手配だって載ってたの。この女がね、うちの店にいると云うんですよ。それで「これ、いるのかね、本当に」って云ったら、「います」と。

「殺人犯なら、すぐ突き出さなきゃダメだよ、それがあんた方の仕事でしょう」って云ったんですよ。ところがOBは、こっちの事情を忖度して、「まずいんじゃないですか」って云うの。いろいろね、世間の目もあるでしょう、と。