官々愕々
プーチン大統領の「踏み絵」

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 安倍総理のロシア訪問で、領土問題解決に向けて再スタートが切られた。しかし、マスコミの報道を見ていると、ロシア側からの取材が殆どないままの一方的な内容が目立つ。

 日本の立場は一言で言えば、終戦後に一方的に日本の領土を略奪したソ連(現ロシア)の行為は不法だから、北方4島の返還は当然だというものだ。

 しかし、今北方4島に住んでいる住民の立場に立てば、彼らにもロシアの国民としての権利がある。その意思に反して勝手にその居住地の帰属国を変えるのは、究極の人権侵害だという理屈も成り立つ。事実の積み重ねがいかに力を持つかということだ。しかも、プーチン大統領の人気には翳りが見え、この問題で安易に譲歩することは政治的に難しいという事情もある。

 以前の会見でプーチン大統領が使った「引き分け」という言葉の意味をもう一度考えてみる必要がある。面積等分などという日本に都合のよい解釈が出ているが、そう単純ではない。領土問題でロシアが大きな「譲歩」をするのであれば、経済面で日本が大きな「譲歩」をしなければならない。そういう「引き分け」もあると考えたらどうなるか。経済面で「ウィン・ウィン」を達成すればよいという日本側の考えとはかなりのすれ違いが生じる。ロシア側は、経済では、日本により大きな譲歩を求めているという認識がないからだ。

 そうなると、LNG(液化天然ガス)を市場価格で買うというのでは全く意味がない。国際協力銀行の融資、医療、農業の協力にしても結局は日本のプラント、医薬品、医療機器、農産品の輸出のために過ぎず、日本企業がロシアに攻め込む図式にさえ見えてくる。

 記者会見におけるプーチン大統領の顔色は冴えなかった。何故か。

 首脳会談の成果として、ロシア国民に驚きを与えるようなものが皆無だったからだ。会見最後のブルームバーグの記者の質問に対するプーチン大統領の回答がそれを物語っていた。エネルギー協力に関する質問に対し、プーチン大統領は3つの例を挙げた。日本国内におけるガス受け入れプラントやパイプライン建設へのガスプロム社の参入、ロシアから日本への電力輸出、さらにLNGタンカー建設へのロシアの参加である。