ブルーバックス
『ジムに通う前に読む本』
スポーツ科学からみたトレーニング
桜井静香=著

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大切なのは、正しい運動を、適切な「順序」と「間隔」で行うことです。
●「大きな筋肉」から始めると効果的
●「筋トレ→有酸素的運動」で脂肪燃焼が高まる
●筋トレの種目の間の休息は1分半以内に

大きな筋肉から先に鍛え、「筋トレ→有酸素的運動」の順に行う
筋力増強には「大きな筋肉から先に鍛える」手法、脂肪燃焼には「筋トレ→有酸素的運動」が効果的、など最新の運動・スポーツ科学に裏付けられた方法を用いて、ジム通いを、より質の高いものにするための1冊。ストレッチング、筋力トレーニング、ウォーキング、ランニング、エアロビクス、水中トレーニング、ピラティス、ヨガなど、ジムで行われるさまざまな運動について、その理論と効果を解説する。

はじめに

 総合的な運動施設としてのスポーツジムが日本で本格的に広まったのは、1980年代のことです。その約20年前に、スイミングスクールやテニススクールなどの特定スポーツのための施設が広まりました。そして、1980年代に入り、アメリカからエアロビクスやジョギングブームが持ち込まれ、すべてをまとめた形のスポーツジムが全国展開していきました。

 このように、スポーツジムの歴史はわずか30年ほどですが、いまや生活の一部にしっかり定着しています。さらには、マシンやプールだけではない、さまざまな付帯施設を備えたジムも増えていますし、介護予防専門のジムが立ち上げられたりするなど、年々変化を続けています。

 筆者は、こういった総合的なスポーツジムやコンディショニングセンターなどの専門ジム、あるいは小さな町のジムなど、さまざまなスポーツジムでトレーナーを務めてきました。いっぽうで、運動科学研究者として、大学の研究室に籍をおいています。健康運動指導の現場と運動科学研究の現場を、17年近くいったりきたりしてきたわけですが、その経験から実感しているのは、運動科学理論に基づいた運動を続けると、漫然と運動するよりも、より大きな効果が得られるということです。

 たとえば、26歳のあるスポーツ好きの女性は、ストレスが原因で体調を崩してしまいました。自分を立て直すために、身体にやさしい筋力トレーニングを実践しながら、同時にスキルアップを図るトレーニングも丁寧に行いました。2年間の地道なトレーニングの結果、ここまで身体が変化するのか? というくらい、彼女は見事に変身したのです。精神的なしこりもとれ、本物の基礎的筋力を復活させ、2年前とは全く比べ物にならないような体のキレが生まれました。

 彼女の印象的な言葉が、いまも頭をよぎります。

「身体にとって本当に大事な運動は、派手なパフォーマンスでも、カッコよく見える運動でも、激しい運動でもないのですね。美しいな、と感じることもできる無駄のないシンプルな運動が、健康を取り戻してくれたのです」

 また、本文でもご紹介している50代の男性の方は、私にずばりこうおっしゃいました。

「いくつになってもトレーニングに限界なし!」「若いもんには負けん!」

 運動のプラス効果は、始めた時期からあらわれます。開始年齢は関係ありません。それを日々実践しているというわけです。さらに、この方の印象深い点は、常に「何のために、身体をどう動かすか、それが本当にベストトレーニングなのか、これ以外に何かスキルはないのか?」と自分なりの方法論を検討し、可能性を探ることをやめなかったところです。