「人間対コンピュータ将棋」頂上決戦の真実【後編】 一手も悪手を指さなかった三浦八段は、なぜ敗れたのか文/山岸浩史

2013年05月15日(水)
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---事前の研究で、GPSの弱点には気づきませんでしたか?

 「明らかな癖などは見つかりませんでした。でも逆に、それでよかったと思っています。

 もし見つかっていれば、そこを衝くべきかどうか思い悩んだでしょうから。弱点を衝いて勝ったとしても、それで勝ったといえるのかというところがありますので。ただ団体戦だから、本当はやりたくなくてもそうすべきだという考え方もありますし・・・難しいところです

羽生、渡辺がコンピュータと戦う日

 この勝負によって考え方に何か変化があったかを尋ねると、三浦は「将棋のことじゃなくてもいいですか」と前置きして、こんなことを語った。

 「太平洋戦争について、『なぜ日本軍はあんな無謀な戦いをしたのか』とよくいわれるじゃないですか。でも、本当はあのとき日本軍にも、冷静にアメリカの強さを計算できた人はいたと思うんです。お互いの国力を比較して、もし最悪の予想が的中した場合は、勝ち目はないと。

 それでも開戦に踏み切れたのは、まさか相手がそこまで強いとは思わなかったからなのでしょう。ところが、いざ戦ってみたら、そのまさかだった。そういうことだったのだろうと思うんです。今回の勝負で私は、そういうことは実際に起こりえるのだと学びました」

 最後に言っておきたいこととして、三浦はこう話した。

 「悔いのない戦いができたのはよかったのですが、結果として興行的に次回に興味をつなげられなかったことを申し訳なく思っています。

 開発者の方々にも、お詫びしたいと思っています。システムがダウンしないようにとか、私が気持ちよく対局できるようにとか、すごく気を遣っていただきました。記者会見のときは気持ちの切り替えができず、そのお礼をちゃんと言えませんでした。

 開発者の方々とお話をしていると、本当に純粋に、ソフトのことを子どものように思っているのがわかります。だから、あれだけ強くなるのでしょう。そういう気持ちを、自分はつい忘れかけていました。

 将棋連盟の棋士として勝たなくてはならないという立場を別にすれば、GPSは指していて楽しい相手でした。自分より明らかに強い相手と指すという、将棋本来の楽しさを思い出させてくれました。もしも、どこか誰も知らないところでひっそりと対戦できていたら、どんなによかっただろうと思います」

***

 

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