現代の投資と企業経営に通じるもの【後編】
谷家衛「生き残れる投資家と生き残れない投資家は、何が違うのか」

【前編】はこちらをご覧ください。

膨張したグローバルマネーが価格を乱高下させる時代

谷家衛さん

 今、過去の投資の理論はすでに通用しない時代になっています。そのことを示す例としては、「2008年から2009年にかけての原油価格の乱高下」があります。

 かつて、原油に投資する人は、実際に原油を求めている人に比べると、少数派でした。その頃は、投資のお金が入り込むことが資金の適正配分を助け、ボラティリティ(価格変動の幅)を小さくしていました。ところが今はそれが逆転し、投資のお金が、かえってボラティリティを大きくしているのです。

 リーマンショックの前、投資家は一様に「投資先として原油がいい」と判断し、買いに動きました。その結果、原油の価格は上がりました。原油に投資された金額が、実際の需要の金額をはるかに上回りました。

 ところがリーマンショックが起こり、皆、いっせいに売りに転じました。当然、原油の価格は下がります。従来の理論では、そのとき、本当に原油を必要としている人が買う、となるはずでしたが、実際はそうは行きませんでした。

 投資家の数があまりにも多くなり、彼らが投じた金額があまりにも巨額になっていたため、売りに出された原油を買い切れなかったのです。すると、価格はさらに急激に、大きく下落します。2008年7月11日に1バレル当たり147.27ドルの最高値を付けた原油は、わずか5ヵ月後の同年12月19日、32.40ドルまで急落しています。

 実はこのように、経済ファンダメンタルズから大きく乖離して価格が乱高下するという現象は、原油市場だけでなく、近年、さまざまなところで起こっています。そして、イベントリスクの発生を増やしているのです。

 グローバルマネーがいかに急激に膨張しているかというのは、ワールド・ダラー(アメリカ国内の貨幣供給に、アメリカ以外の中央銀行が外貨準備として保有するアメリカ国債残高を加えた米ドル保有量)の推移を見るとよくわかります。2000年初頭に1兆円余りだったワールド・ダラーは、2011年3月には6兆ドル近くに達しているのです。

 リーマンショックのような事態は、いつ再び起こっても不思議ではないのです。投資をする際には、そういうリスクがあることを前提に、非常事態に備えておく必要があります。