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古賀: TPPに関しては、いろいろな項目があるので、ひと言ずつ言っておきたいと思っていて、たとえば「医療分野」です。議論されているなかに、国民皆保険が崩壊するなんていう話がありましたね。混合診療を解禁することになるんじゃないか、解禁すると皆保険がなくなるんじゃないかという議論があって、私はそのこと自体、非常におかしな議論だと思っているんです。
そういえば、前回のテキスト版のメルマガで触れましたが、お子さんが小児ガンで10年ぐらい非常に苦労されて闘ってこられたという方からのメッセージがありましたね。お子さんとずっとアメリカで闘病を続け、最近事情があって日本に帰られた。そうしたらアメリカと日本の医療制度の違いに直面された。日本の医療はすばらしいと言われているんですけど、どうもそうではないのではないかという疑問を書かれていたんですね。もっと具体的にいろいろ教えていただきたいと思っているんですけれど。
日本の医療制度というのは、お年寄りがちょっと風邪をひいたというときに気軽に病院に行けるとか、そういう意味では大変に優れた制度なんですけれど、でも実は、高度な医療を必要としている人から見ると、非常に使い勝手が悪い。おカネもかかる。どういうことかというと、保険が適用されない高度医療を受けたいと思っても、すべての治療の保険適用を諦めない限り、部分的に高度医療を受けることはできない。それが混合診療禁止の意味ですね。
国民皆保険というのは、これは本当に維持できるという前提で言えば、すばらしいことです。皆保険という考え方は、ぜんぜん変える必要はないと思う。事実、アメリカから見ても日本の保険制度は非常に参考になるといい制度だという考え方があるんですね。
それでオバマさんも今、もちろん日本みたいにということではないんですけれど、貧困層をちゃんと保険でカバーできるような仕組みに変えていきたいという取り組みをやっている。国内の反対も強くてなかなか思いどおりにはいっていないんですけれど、基本としては日本人が考えていることとそんなに違うことを考えているわけではないんですね。
ところが、TPP反対派の人たちからは、アメリカはきっとその日本の皆保険制度を壊滅させるようなことを言ってくるだろうという話が聞こえてくる。実は先週の金曜日に、たまたまテレビ朝日の『ワイド!スクランブル』というお昼の番組──僕は木曜日に出ているんですけれど──を見ていたら、ルース駐日アメリカ大使が出演されていた。大使の出演自体が珍しいんですけれど、ナマ放送ですからナマでいろいろ質問に答えられていたんです。
そのなかで非常にびっくりしたのは、「TPPをやると国民皆保険が崩壊するという意見があるんですけれど、アメリカはそういうことを考えているんですか」という質問に対して、ルースさんは「いや、日本の保険制度は非常にすばらしいものだ。そういうものを危機に陥れるようなことは絶対にあり得ない」と非常にはっきり明言されていました。アメリカはそんな理不尽なことを要求するなんてあまり考えられないという感触を私は非常に強く覚えました。