フジテレビは本当に「ドラマでうなぎ登り」となるか!? 元花形プロデューサー・大多亮氏が手掛けた4月改編の成否

 大多亮氏(54歳)の名前をご存知の方は少なくないだろう。フジテレビの元花形プロデューサーで、1980年代後半から90年代に、『東京ラブストーリー』や『101回目のプロポーズ』、『ひとつ屋根の下』を手掛け、次々と大ヒットさせた。

 その大多氏も現在は54歳となり、現場を離れ、フジの経営陣に加わっている。2012年6月、常務に就任し、編成と制作を担当。番組全体を統括する立場だ。若くしてテレビ局中枢のトップに立ったため、その就任時には一部週刊誌で「次期社長候補」と書き立てられた。

 ところが、テレビ朝日の台頭があり、フジ自身の番組も息切れが生じている時期の就任だったため、2012年度の視聴率は、テレ朝と日本テレビの後塵を拝し、3位に終わってしまった。

 すると、今度は同じ週刊誌が、「大多氏の責任が問われている」と更迭をにおわせた。常務になったばかりで「社長」と持ち上げられるのは、企業人として迷惑な話だろうし、一転して「更迭」と書かれるのも、良い気分ではないはずだ。

 実際ところはどうなのかというと、少なくとも常務就任の時点で、「次期社長」などという気の早い声は社内から聞こえてこなかったし、就任一年での更迭もあり得ない話。そんなことをしていたら、いくら人材がいても足りない。そもそも売り上げと利益はともに民放トップなのだから。

 第一、本当に大多氏が更迭されてしまったら、日枝久会長ら首脳部の任命責任が問われかねない。ビール業界や自動車業界など他業種と比較すれば自明だが、致命的なミスや深刻な病気でもないのに、役員が短期間で更迭されるケースはない。テレビ界は決して特殊な業界ではなく、大半が1部上場企業であり、組織は上場企業としての常識で動いている。むしろ保守的と言えるほどである。

キー局最多のドラマ枠を新設

 「社長候補」「更迭」と忙しかった大多氏だが、自ら手掛ける本格的な改編は、実はこの4月改編が初めて。テレビの改編には約半年から一年以上を要する。新車や新半導体の開発ほどの準備時間はいらないが、新番組だって短期間ではつくれないのだ。この4月改編の成否が判明するまで、大多氏の責任論など浮上するはずがなかった。

 大多氏の真価が初めて問われる4月改編は、成功したと言っていいだろう。ハードディスク機器の普及によって、録画率が高まり、ドラマには不利な時代だが、あえてドラマで勝負し、高視聴率を得ている。大多氏にとって、ドラマは自家薬籠中の物だが、「選択と集中」においても得意のドラマを選び、力を入れ、結果を出したのだ。「この春、ドラマでうなぎ登り」というフジのPRスポットを目にしたことのある方は多いだろうが、フジ自身、ドラマで浮上を図っていた。

 4月改編では日曜日の午後9時台のドラマから撤退したが、代わりに水曜日の午後10時台にドラマ枠を新設。フジのプライムタイムには5本のドラマ枠があり、これはキー局で最多である。

 その5本を見てみると、20%台の視聴率を連発している『ガリレオ』をはじめ、すべて2桁台の視聴率に乗せている。大多氏は記者会見などで、「ドラマ枠はもっとあったっていい」と言っているが、なるほど、バラエティーで20%を取るのは至難だし、スタート時から2桁台の視聴率を取るバラエティーもあまりないから、ドラマで攻めるという企業戦略は面白い。ドラマは受難の時代だが、一方で視聴率を急浮上させる特効薬でもあるのだ。

 日本テレビは2011年の『家政婦のミタ』の最終回で40%の視聴率を得たが、バラエティーやニュースでは、あり得ない。サッカーの日本代表戦なら可能な数字だが、目玉が飛び出るような放送権料を取られるうえ、DVD販売などの副次収入もない。局内の人材育成に役立つわけでもないから、企業としての資産にならない。

 半面、いくら録画機器が発達しようが、良いドラマはオンタイムで見たくなるのが人情。周囲で話題になっていれば、なおさらだろう。しかも大多氏の配下にいるドラマ制作担当局長は、就任2年目で本領を発揮し始めた石原隆氏(52歳)。過去、『古畑任三郎』『王様のレストラン』などをプロデュースしたヒットメーカーで、テレビ界の誰もが認める敏腕である。

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