安倍政権は六年前のリベンジを果たし、歳入庁を実現できるか?マイナンバー法案成立への二つの懸念

 マイナンバー法案が5月10日、参議院で審議入りした。行政効率化のために国民総背番号は当たり前であり、日本は先進国の中で導入が遅れていた。番号制自体は遅すぎた感がある。

筆者は15年前にアメリカ・ニュージャージー・プリンストンに住んだとき、当時の大蔵省の前任者から、まず初めにやることとして、州の役場に行って社会保障番号を入手することと、いわれた。社会保障番号番号がないと、車の保険に入れず、運転免許証も取れず、銀行口座の開設もできず、クレジット・カードも持てないからだ。

 ところが、地図を頼りに治安の悪い隣町のトレントンにある州の役場に行くと、外国人には社会保障番号を発行しない方針だと言われ、他にも社会保障番号を入手したい外国人もいて、大騒ぎになった。いっしょにいた私の知人はそのドサクサに紛れて社会保障番号をちゃっかり手に入れたが、私自身は騒ぎに巻き込まれて怪我でもするとまずいと思い、すごすごとホテルに帰ったのを覚えている。

後日、プリンストン大学に相談したら、臨時の社会保障番号を「発行」することになった。私以外にも社会保障番号が必要な外国人教授や学生が多かったからだ。番号がないとアメリカでは生活できないと改めて思った。

不公平の是正こそ、増税の前に

 その当時、ウィル・スミス主演の「エネミー・オブ・アメリカ」という映画をみて、社会保障番号を入力するとその人のローンなどの個人情報がすべて把握されるというシーンがあり、あながち誇張でないと思ったものだ。なお、アメリカは社会保障番号を民間が利用するのはかなりゆるい。もし万が一問題になったら裁判で解決するという考え方だが、それでも最近では一部の州でやや制限的になっているようだ。

ただ、私立大学が社会保障番号を「発行」するのは興味深かった。大学が番号を「発行」出来る理由もあとで分かった(後述)。

 先進各国ではすでに国民総背番号制が導入されている。アメリカ、カナダでは社会保障番号、スウェーデン、フランス、韓国などでは住民登録番号、オーストラリア、イタリアでは納税番号があり、当該分野以外にも活用されている。

筆者は、国民総背番号とともに、国税庁と年金機構徴収部門を統合したいわゆる「歳入庁」によって、税・保険料の徴収漏れが10兆円程度期待できるといってきた。アメリカのように、確定申告では社会保障番号を記入させ、そのうえで銀行口座開設のときにも社会保障番号が必要とする。怪しい申告書についてその社会保障番号を金融機関に照会すれば当座預金の資金トレースが簡単にできて、脱税を見つけるのは今より格段に高くなるだろう。これは、元税務署長の経験からきている。

こうした不公平の是正は、増税(税率を上げること)の前にやっておくべき税の鉄則である。

この意味で、マイナンバー法案の成立を期待している。ただし、2つの懸念がある。

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