マーチの生産をインドからフランスへ!?正念場を迎える日産ゴーンCEOは業績悪化するルノーの経営に専念すべきときだ

 日産自動車の業績が正念場を迎えている。ここ数年、超円高という逆風の中でも好業績を維持してきたが、ドル箱だった中国での販売減や、米国での新車生産立ち上げの遅れと販売面での苦戦など想定外のアクシデントもあったからだ。さらに、パートナーである仏ルノーの業績が悪化しており、この点も日産がさらに飛躍を遂げるためのネックとなり始めている。

 日産のカルロス・ゴーン社長は5月10日、2013年3月期決算を発表した。売上高は前年同期比2・3%増の9兆6296億円となったものの、本業の儲けを示す営業利益は4・1%減の5235億円だった。営業利益率は5・4%と製造業の経営の合格点の目安である5%台を維持しているが、各社が増益決算を発表している中で、日産の業績が伸び悩んでいることを印象付けた。

 グローバル販売の内訳では、日本が1・3%減の約65万台、中国が5・3%減の約118万台、欧州が7・5%減の66万台、北米が4・5%増の約147万台、東南アジアや中南米などが16・3%増の約96万台だった。

 日本については、市場構全体で軽自動車とハイブリッド車が6割を占める状況の中で、日産は軽自動車を他社からのOEM供給に頼っているため、商品の供給力不足やハイブリッド車の製品ラインナップがトヨタ自動車に比べて見劣りすることなどから販売減となった。中国は尖閣問題、欧州は長引く不況により販売が伸び悩んだ。

急速に経営悪化するルノー

 記者会見で意外だったのが、ゴーン社長が「我々が失望したのは中国ではなく、米国だった」と語った点だ。米国は販売を増やしたのに、ゴーン社長がこのように発言したのには訳がある。それは、中国の尖閣問題は「政治問題」であり、欧州の長引く不況は「金融問題」であり、日産の自助努力だけではカバーできない要因があった。しかし、景気が回復しつつある北米では主力セダン「セントラ」をモデルチェンジして大攻勢をかけるはずだったのに、生産の立ち上がりが遅れて商機を逃し、目標の生産コストは達成できず、しかも販売競争でトヨタやホンダに押されまくった。

 この結果、北米地区の営業利益は228億円減少して約1773億円となった。これも各社が北米で業績を盛り返している中で日産が相対的に見劣りした点だ。

 

 これがゴーン社長を苛立たせた。準備不足、努力不足とゴーン社長には映ったのであろう。ゴーン社長が最も嫌うパターンであり、担当役員は更迭された。日産はリバイバルプランで経営危機から立ち直って以降、着実に計画をこなし、着実に目標を達成させる体質を築いてきたが、油断から中国に次ぐドル箱市場の北米で大失敗を演じ、中国や国内での販売減を補う目論見が狂ってしまったのである。最近の日産では珍しい「失態」である。
 

 日産は2014年3月期決算では、世界各地で販売攻勢をかけ、売上高は16・3%増の11兆2000億円、営業利益は33・7%増の7000億円を見込む。「円高という向かい風もなくなった」(ゴーン氏)ことから円安効果分で2250億円の増益要因が生じる。

 しかし、好業績を目論む背後に「病魔」も潜んでいる。それは、ルノーの業績が悪化している点だ。日産とルノーはこれまで「夫婦」のような関係であり、お互いが支え合う構造になっていた。ゴーン氏は日産とルノー両社のCEOを兼任している。ところが欧州市場を基盤とするルノーは極度の経営不振にある。日産がこれまで配当という形で支えてきたが、それだけではルノーの経営は成り立たない局面に立っている。

 ゴーン氏は「プジョーやフィアットなど似たような企業と比べて業績はまずまず」と強がるが、日産が「ミルク補給」しなければ、雇用が維持できない状態なのだ。たとえば、日産はインド工場で生産して欧州に輸出していた小型車「マイクラ(日本名マーチ)」をルノーのフランス内の工場に移す計画だ。この計画の背景には、ゴーン氏に対して仏政府の圧力が働いたとされる。ルノーはかつて国営企業であり、今でも仏政府が筆頭株主だ。

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