憲法改正で問われる地方自治について、その争点を改めて考えてみる

 安倍政権が憲法改正を今夏の参院選挙の争点と謳ったことにより、与野党共に具体的な対応の検討を求められている。民主党においても憲法調査会の議論が参院選に向けて加速されると同時に、より慎重な姿勢を問う声も大きくなる気配だ。いずれにしても、もはや争点化は避けられない状況になりつつある。

 憲法改正が参院選の争点として示されることは総選挙前の安倍総裁の言動からも明らかであったことから、私自身はむしろ新たな別の争点設定準備を早急に行うべきであると考えていた。

 一方、政界の離合集散の行く末を考えると、統治機構改革を党是に掲げる維新が改憲に前のめりになることは容易に想像でき、自民と維新の改憲勢力の合流、改憲慎重論が根強い公明の立ち位置の揺らぎ、さらに中道・リベラル勢力を代表しようとする民主のスタンスによって、政界の構造が大きく変わる可能性も十分に考えられた。

 このような状況の中で、96条改正が改憲の焦点のように伝えられているが、上記のような政界構造を大きく決める、改憲を巡る争点を改めて考えてみる。

憲法で定められる統治機構

 改憲の争点として96条、いわゆる改正発議の要件が主に取りざたされているが、自民のみならず、野党である維新が改憲勢力たらんとする最大の源泉は統治機構改革にある。維新は橋下共同代表による大阪都構想をはじめとする「地方分権」及び「統治機構改革」を前面に打ち出して国政に進出してきた。したがって、改憲の最大の主眼はこの統治機構改革であることは明らかである。

 一方、大阪都構想は昨年8月に与野党7党による議員立法として「大都市地域特別区設置法」が成立し、法制度上はその目的とするところを可能にした。しかし、維新の意図する統治機構改革はこれにとどまるものではない。むしろ連邦制に近い地方自治を企図し、その先の道州制を発信を続けている。その場合には、自ずと憲法の改正が求められることになる。

 現行憲法では第8章地方自治で、92条から95条までにその規定がなされている。92条で「地方自治の本旨」の下、地方公共団体が法律に基づいてすべて行われることが示されているのだが、この「本旨」は解釈として地方公共団体による「団体自治」と、地域の住民の意思とその責任に基づく「住民自治」の二つを示しているとされている。

 憲法改正にあたっては、統治機構改革を主張する立場からはこの「地方自治の本旨」の中身について、「国と地方の役割分担」及び「道州制」について明記すべきという議論が提示されるだろう。

 93条では自治体の議会と首長が直接選挙で選ばれるという「二元代表制」についての規定が示されている。これについても、米国や英国などのようにシティマネージャー制として、議会の長が首長を兼任した上で、行政や都市経営の専門家を「支配人」(シティマネージャー)として任命し市政の実務を担当させることができるような、多様性に富む自治を求める意見も憲法改正事項として出されている。

 また、94条では自治体の権能を規定しているが、特に同条は法律の範囲内での条例制定を定めたものであり、これに対する改憲議論として、法律と条例を区分して立法措置を可能にすべきだとする「条例先占論」がある。民主党マニフェストにもいわゆる「上書き権」が示されてはきたが、条例による先占論ではない。これなどは、明らかに連邦国家を目指すという「国のかたち」を明確に求めていることに他ならない。

 一方、95条は、一つの自治体のみに適用される特別法の成立に、住民投票による過半数の同意を条件としているが、これについては、最近ではほとんど例がないため、維新の会からは「死文化している」として削除すべしとの意見が出ている。しかし、95条は住民自治の原則を具体化するために設けられた規定であり、これを削除することは地方分権の流れとは相容れない主張ではないかと考えられる。

 このように、統治機構改革の先にある憲法改正論議は、単に道州制の導入ということだけではなく、連邦型国家を作るのか否かという、国の在り方に直結する課題についての結論を前提とするものである。

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