特別対談 國領二郎×海部美知
「情報(データ)の本質を理解するものだけが世界を制する」<前篇>

最近とくに注目を集めている「ビッグデータ」とは何なのか。
新しい情報革命によって、ビジネスや日常生活はどのように変わるのか。
情報を取られることで、私たちのプライバシーは守れるのか。

新刊『ソーシャルな資本主義 つながりの経営戦略』(日本経済新聞出版社)を上梓し、eガバメントなど公共部門におけるデータ活用の推進も主張する國領二郎さんと、新刊『ビッグデータの覇者たち』(講談社現代新書)を刊行し、シリコンバレー在住で“Tech Mom”として知られるコンサルタントの海部美知さん。

情報(データ)の本質に精通するお二人が、欧米の最新事例を紹介するとともに、ビジネスや公共政策において、データを活用することの意義やそれによって起きる変化について、大いに語り合った。

國領二郎さん(左)と海部美知さん(右)

※この対談は4月25日に「ゲキBiz田原チャンネル」で放送されたものを書き起こしたものです。

★記事中、ダイジェスト版の動画もあわせてご覧いただけます。

「ウェブ2.0」提唱者が流行らせた?!

國領 シリコンバレー在住の海部さんからすれば、常日頃からビッグデータの話題で持ち切りといった感じだと思うのですが、私は少し疑問に思うところがあって、なぜ「今」あらためてデータなのかと思うのですが。

 というのも、通信業界に身を置いてきたわれわれからすれば、これまでもデータマイニングなど、データに注目が集まったことはあって、これまでとは何が違うのか、どうして今この流れは大きくなってきたのかということをまずはお聞きしたいと思います。

海部 その前に、ビッグデータとは何かをごく簡単に説明したいと思います。

 詳しくは、拙著『ビッグデータの覇者たち』をぜひ読んでいただければと思いますが(笑)、ビッグデータという言葉を二つに分けて考えてみます。つまり、「ビッグ」と「データ」ですね。

 ビッグとは、ひとの頭では処理できないような、ものすごい量の、ということです。データとは、そのものすごい量の情報を解析して、そこから意味を引き出し、何かの行動に結びつけたりする考え方のことです。

 世間一般でよくいわれるビッグデータとは、ストレージ業界の陰謀じゃないかなんて話もありますが、ビッグのほうに注目がいきがちです。それは、ハードメーカーさんしかり、サービス提供者しかり、そちらのほうがビジネスに直結しやすいということが理由として考えられます。

 ただ、私が主張したいのは、後者のデータの考え方のほうです。つまり、今世の中に存在する問題を解決したり、みんながより幸せになるために、どうやってデータを使うのがいいのかを考えていきたいと思っています。

海部 つづいて、國領さんのご質問への答えですが、シリコンバレーでこういった潮流が大きくなってきたのは、2007、08年ごろだと思います。そのころ、ちょうど物量としてのデータの量が非常に大きくなってきました。

 2007、08年ごろというのは、iPhoneが発売されたのが2007年で、サービス開始はそれよりも前ですが、フェイスブックやツイッターが普及しはじめたころでもあります。

 日本では、いわゆるガラケーの性能の良さも手伝って、携帯で写真を撮って、それをブログにアップするというのは当たり前になっていましたが、アメリカで、モバイルとソーシャルが相互にフィードしはじめたのが、ちょうどこのころです。

 くわえて、ウェブ業界のビッグデータの主流プレイヤー、グーグルとアマゾンを支えるコアの技術となるハドュープ(Hadoop)やダイナモ(Dyanamo)の論文が公開されたのも、2006、07年のことで、さまざまな要素が同じ時期に絡み合ってきたわけです。

 それから5~6年経っているわけですが、その間、徐々に流れが大きくなってきて、ビッグデータという言葉がシリコンバレーで本格的に流行りだしたのが、2011年ぐらいです。

 それは、ひとつは、「ウェブ2.0」の提唱者で、オライリーメディアという出版社を主宰する、シリコンバレーの思想家ともいえるティム・オライリーがビッグデータという言葉をよく使うようになった影響もあると思います。

國領 ストレージ業界じゃなく、出版社の陰謀だったわけですか(笑)

海部 陰謀かどうかはわかりませんが、オライリーは、シリコンバレーでは非常に尊敬されていることもあって、彼が講演などで話すたび、ビッグデータがバズワードになっていったのは事実ですね。

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