『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』
~第1章「世界を変えるビッグデータ」(続き)~

2013年最大のキーワード「ビッグデータ」を初めて本格的に論じたベストセラー、待望の翻訳!!
我々の未来の生活、仕事、意識、すべてが「ビッグデータ」によって大きく変わる!


伊藤穰一(MITメディアラボ所長)
「押し寄せる情報の波によって、世の中の捉え方自体が根本から変わろうとしている。この事実をあぶり出すうえで新境地を切り開いたのが、本書『ビッグデータの正体』だ。企業はいかに新たな価値を生み出すことができるのか、人々は物事の認知のあり方をどのように変える必要があるのか---本書は大胆な主張と見事な語り口でその答えをはっきりと示している」

ローレンス・レッシグ(ハーバード大学ロースクール教授、『Free Culture』著者)
「物の見方を大きく変えてしまう本が10年に数冊は登場するが、まさに本書がそれだ。社会はビッグデータがもたらす変化に目を向け始めている。本書はその重要な出発点となる」

第1章「検索データからインフルエンザ流行を予測したグーグル」他はこちらをご覧ください。

「量」が変われば「本質」が変わる

 もう少し歴史的な視点から、現在の情報洪水を昔の情報革命と比較してみよう。

 グーテンベルクが印刷機を発明したのは、1439年ごろのこと。歴史家のエリザベス・アインシュタインによれば、1453年から1503年の50年間におよそ800万冊の本が印刷されたという。その1200年ほど前のコンスタンティノープル建設以来、欧州では写本、つまり筆写者がせっせと書物を生み出してきたわけだが、その写本を全部足しても印刷機誕生からたった50年間に作られた800万冊には及ばない。

 言い換えれば、欧州では蓄積された情報の量がわずか50年でほぼ倍増したことになる(当時、世界中の全蓄積情報のうち、欧州が圧倒的なシェアを占めていたはずだ)。ちなみに、現在では、情報量は約3年で倍増している。

 この増加は何を意味しているのか。NASAジェット推進研究所勤務を経てグーグルで人工知能研究を手がけるピーター・ノーヴィグは、絵にたとえて次のように説明する。

 まず思い浮かべてほしいのは、フランスのラスコー洞窟で見つかった、有名な馬の絵だ。あれが描かれたのは、約1万7000年前の旧石器時代にさかのぼる。次に馬の写真を想像してほしい。あるいはピカソの絵でもいい。いずれにせよ、洞窟の壁画とまるで違うとまでは言えない。現に、ピカソはラスコーの壁画を見て「我々は(ラスコー以来)何も考案していない」と自虐的に語ったことがある。

『ビッグデータの正体』
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 ピカソの言葉は、ある面では真実を突いているのだが、別の角度から見るとそうでもない。昔は馬の絵を描くのに長い時間がかかったが、今なら「写真」という形であっという間に馬の姿を再現できる。これは変化ではあるが、本質的な変化とは言えない。どちらも馬のイメージであることに変わりないからだ。

 それでは、馬の姿を取り込み、1秒間に24コマの速さで動かすと、どうだろうか。量が増えることで質まで変化することになる。動画は、静止画とは根本的に違う。

 これと同じことが、ビッグデータにも言える。量が変わることで、本質も変わるのだ。規模の変化がときに状態の変化を生むことは、物理学や生物学で学んだとおりである。