市場が驚いた「黒田バズーカ砲」
デフレ脱却へ新「量的・質的緩和策」「危うさ」の指摘も【金融】

日銀総裁に就任後初の金融政策決定会合を終え、記者会見で質問に答える黒田東彦日銀総裁=東京都中央区の日銀本店で4月4日

 日銀が黒田東彦新総裁の下で新しい金融政策の枠組み「量的・質的緩和」に乗り出した。お金の量(マネタリーベース)を2年で2倍にするのが特徴で、市場では「黒田バズーカ砲」とも呼ばれる。白川方明前総裁の政策を大胆に転換した格好の異次元緩和を受け、円安・株高が止まらないが、その緩和手法には「危うさ」を指摘する声も。デフレ脱却に向けた黒田総裁の手腕が問われることになる。

 黒田総裁が就任前から強調していた言葉が「やれることは何でもやる」。このセリフは欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が昨年夏、欧州債務危機を沈静化するために使った「あらゆる手段を取る」との言葉と酷似しており、市場では早くから日銀が大胆な緩和メニューを導入すると想定していた。

 黒田総裁が就任して初となった4月の金融政策決定会合はその市場が予測したメニューのほとんどを決定した。市場からは「全てを一度に決めたことがサプライズだった」(債券担当アナリスト)との声が聞かれた。

 黒田総裁が導入した「量的・質的緩和」とはどんな政策なのか。文字通り日銀の発行するお金の「量」とそれを増やすために購入する資産の「質」の両面を強化するのが特徴だ。これまでの日銀は政策金利(無担保コール翌日物)をどう操作するかを意識して緩和を実施してきたが、現在の政策金利は0~0・1%と超低利だ。これ以上、金利を引き下げる余地がないため、政策の操作目標を金利ではなく、お金がどれだけ増えかを測る「マネタリーベース」に変更した。

 マネタリーベースは市中の現金と銀行が決済用などで日銀に預けている当座預金残高の合計。お金の量を増やすには日銀が市場からこれまで以上に金融資産を買い、その見合いで資金供給を増やす必要がある。

14年末に270兆円の資金供給

 この緩和策では、12年末に138兆円だったマネタリーベースを14年末に270兆円に増やす計画だ。お金の量を増やすことでお金の価値を下げてインフレにつなげる狙いがある。06年まで実施した前回の量的緩和でもマネタリーベースは100兆円前後。それに比べて黒田総裁が目指すのは、日銀にとってこれまでに類例のない巨額な「量」となる。

 日銀がお金を供給するために購入する資産の内容も大胆に見直された。これまで日銀は満期まで平均3年弱の国債だけを購入していたが、これを平均7年程度に拡大し、より長い金利の低下を促す。価格変動のリスクが高い上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(J-REIT)の購入も拡大する。

 経済の先行き不透明感から世界的にリスク回避姿勢が強まる中、日銀がリスクを引き取る姿勢を見せることで金融機関や投資家にもリスクを取ってもらう「リスクマネーの呼び水効果」を狙った措置で、これらが「質」の強化となる。

 さらに、白川前総裁との違いとして鮮明となったのが政策運営の「分かりやすさ」だ。これまでの日銀は政策運営の考え方を記す声明文で物価上昇率目標の2%を「できるだけ早期に」達成するとしていたが、黒田総裁は「2年程度を念頭に」と目標達成の期限を切った。

 強力な金融緩和を続ける期間についても、これまでの「必要と判断される時点まで」から「(2%が)安定的に持続するために必要な時点まで」に変更。市場に対し、急に金融引き締めに転じることはないというメッセージを発信した。

 黒田総裁が「分かりやすさ」にこだわるのは、お金を使う人たちに将来物価が上がるという予測(インフレ期待)を与え、積極的にお金を使ってもらうことを狙っているためだ。人々の期待に働きかけるには市場とのコミュニケーションが重要になるため、市場関係者との意見交換会を開催することも決めた。

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