書籍も好調の『闇株新聞』---編集から執筆までをひとりでこなす「ブログジャーナリズム」の確立
『闇株新聞』ホームページより

 月間の株式ブログランキングで首位を独走する『闇株新聞』が、連休前の4月26日、『闇株新聞 the book』(ダイヤモンド社)というタイトルの本になった。

 アベノミクス効果で株価が急騰、「株絡みの雑誌と書籍はなんでも売れる」という恵まれた状況下ではあるが、ブログの開始から2年半が経過、固定ファンがついていることに加え、一般投資家の投資熱が沸騰していることもあって、売り切れる書店が続出、すぐに増刷が決まった。

 「闇株」と、タイトルこそ怪しいが、内容は端正である。株、為替、金利の動きを、プロの眼で読み取り解説する。株式ブログの大半が「この株を買え!」といった「カネ儲け指南」であるのに対し、相場のトレンドは指し示すものの、個別銘柄の推奨はしない。

 従って、読み手にも一定レベルの知識が要求され、本の帯にあるように、「大新聞の経済記者たちやプロの金融マンたち、そしてプロ級の個人投資家が毎日読んでいる刺激的金融ブログ」なのである。

 だから一度、ついた読者は離れず、首位を独走。ひと月2,600円と、プレミアム会員の購読料は高いが、採算ラインに乗るくらいの会員数は確保している。

ブログジャーナリズムの確立

 『闇株新聞』の発行人は正体を明かしていない。それは、読者の想像力を喚起させるマーケット戦略。そこでX氏としておくが、私は後述する経済事件との絡みで、X氏を以前から知っており、『闇株新聞』を立ち上げ、またたく間に人気ブログとなり、「オリンパス事件」「AIJ投資顧問事件」といった経済事件をきっかけに、信頼のおける解説でコアな読者をつかみ、有料ブログ会員を増やしていった経緯も知っている。

 『闇株新聞』が、世界経済から国内経済にまで目を配り、政治状況や民族・文化問題まで加味しながら、毎日、大量の情報を発信していることから、複数で運営していると思っている人も少なくないが、ひとりのブログである。そういう意味で、X氏は無料のブログに有料のプレミアム版を組み合わせ、書籍を含む他の媒体にも進出、今後、「いろんな形でビジネス展開しようと思っている」(X氏)ということだから、ペイするブログジャーナリズムを確立したといっていい。

 玉石混交の情報が氾濫するネットの世界で、信頼を勝ち取って「玉」であるとみなされ、そこからさらに課金に成功、ペイラインに乗せるのは容易なことではない。だが、どんなモノにも価格を設定するのが資本主義の特性なので、ネット上にどれだけ大量の情報があふれていようと、価格のつく「価値ある情報」は存在するし、存在すべきである。

 新聞、雑誌といった既存のジャーナリズムは、タダで大量の情報を発信するネットに読者を侵食され、将来展望を描けないでいるが、それは役所や企業や飲食店、果ては個人までもがホームページやフェイズブックで情報を発信しているからであって、読者は、8割以上が「発表モノ」で占められた既存ジャーナリズムに、金銭を支払う価値を見いだせない。

 だからといって、「本物の情報が欲しい」という欲求が人から失われることはない。情報が氾濫しているからこそ、情報を取捨選択する案内人、背景を解説する識者、政治や行政の監視人が欲しい。それをジャーナリズムというなら、ジャーナリズムは失われないし、むしろ情報が氾濫するネット時代を迎えた今こそ求められている。

 X氏の『闇株新聞』が、採算ラインに乗ったという事は、ブログジャーナリズムの確立であり、ひとりのジャーナリストとして素直に喜びたい。ただ、その採算性は「本当のプロ」にだけ認められるものであることを考えると、厳しい現実を自覚せざるを得ない。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら