「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第3回】 ~欧州経済低迷なのに「ユーロ買い」の不思議 ~

〔PHOTO〕gettyimages

 本講座の第2回で、ユーロ圏だけではなく、ユーロ圏周辺諸国の経済状況をみると、欧州は銀行部門を中心とした信用収縮によってデフレ危機に陥る可能性が高く、その意味では、ユーロ危機を債務危機ととらえる見方は必ずしも適切ではない、という指摘をした。

 第3回では、ユーロ危機を信用収縮によるデフレ危機ととらえた場合、欧州の金融市場に何が起きるかを考えてみよう。結論からいえば、筆者は「デフレ下でのユーロ高、及び、長期金利の低下」であると考えている。

 これは、昨年11月末に上梓した拙著『ユーロの正体』(幻冬舎新書)でも指摘したが、最近のユーロの動きをみるにつけ、「デフレ下でのユーロ高」が実現する可能性が高まってきたと感じている。

為替レートの決定理論では説明できない現象

 筆者はかねがね、為替レートは、金利差で決まるものではなく、通貨供給量の差、さらにつきつめていえば、中央銀行によるマネタリーベース供給スタンスの差で決まると主張してきた。圧倒的多数の為替アナリストは、為替レートを金利差で決まる、しかも、より高い金利(もしくは、より大幅に金利が上昇している国)の通貨が上昇する(つまり、日本でいえば、日本の金利が他国と比べてより大幅に上昇すれば円高になる)と考えているようだが、これは為替レートの理論とは全く逆である。

 金利が高い、もしくはより金利が上昇している通貨が上昇すれば、拡大する金利差(「キャリー」)と通貨上昇分(「キャピタルゲイン」)の両方で高いリターンを得ることができる。そのため、この関係が常に成立するのであれば、投資家は何も考えずに高金利通貨に投資すれば、膨大な利益を上げることができる。為替市場での投資は、もっとも楽で儲けが大きい職業となるはずである。

 たが、現実問題として、為替レートの予想や為替市場での投資は他の投資よりも難しい。また、そもそも、この金利差の考え方はおかしい。もし、これが成立すれば、高金利通貨に無限にお金が集中し、高金利通貨の為替レートはほぼ無限に上昇し、低金利通貨の為替レートはほぼ無限に下落するはずである。

 当たり前だが、実際の為替レート変動はそうなっていない。為替レートの理論では、金利差による超過リターン(つまり「キャリー」)を相殺するように為替レートが変動することで、金利差と為替レート変動のバランスがとられるという構造になっている。すなわち、理論的には「高金利通貨は減価する」ことになる。

 だが、実際のところ、これも実現していない。為替市場では、「高金利通貨が安定的に増価する」という為替レートの決定理論では説明できない現象が日常茶飯に起きている。そして、そのような現象を利用してのキャリートレードが活発に行われているのである。

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