漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?
自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。
(作者:福本伸行 講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)
【第4回】はこちらをご覧ください。
先日、映画「藁の盾」を観ました。
孫を殺された大富豪が犯人の暗殺を全国民に依頼し、「この男を殺した人には10億円払う」と言いました。たとえ未遂に終わっても1億円の報酬がもらえる、とわかると、多くの人がお金欲しさに暴徒化し、犯人に襲いかかりました。
もちろん、いくら犯罪者とはいえ、民間の力で勝手に裁きを下すことは、法律で認められていません。それなのに多くの人が犯人の命を狙い、犯罪者になっていったのです。
ただ、この人たちは、単にお金がほしいだけではありませんでした。
ある人は、中小企業の社長。介護が必要な母親を抱えながら借金まみれになってしまった結末として犯行に及びました。ある人は、奥さんが病気。またある人は、旦那さんがリストラされてお金に困っていた。
「お金より大事なものがある」というのは事実です。それを否定するつもりはありません。しかし、お金があれば避けられる不幸があります。また、お金がなくなってしまうことで陥ってしまう強烈な惨劇があります。
ぼくが『カイジ「命より重い!」お金の話』で伝えたかったのは、まさにこのことなのです。お金のことを考えない人は、お金で人生を滅ぼしかねない---ぼくはそう思っています。
「お金より大事なものがある」というのは事実です。しかし、お金をもらうための仕事で命をすり減らしている人が何万人もいます。精神的、肉体的に病んでしまう人が大勢います。またそこまでいかなくても、日々愚痴を言いながら会社に向かっている人は本当に多いです。
形式だけで考えると、サラリーマンとして働くということは、自分の時間を売ってお金をもらっているということです。つまり、その時間分の「命」をお金で売っているのです。
仕事にやりがいを感じ、イキイキと働いている人は、この限りではありません。問題は、「お金のために仕方なく働いている人」です。あなたにとって「お金」と「命」と、どちらが大事なのでしょうか? どちらが「重い!」のでしょうか?
「お金があれば不幸が避けられる」「お金があれば不安がなくなる」
そう言って、節約術に走る人がいます。
もちろん、自分のお金の使い方を見直し、無駄遣いを避けることは大事です。その結果、お金が貯まることは歓迎すべきことだと思います。しかし、だからと言って「老後の不安がなくなる」わけではありません。なぜか?
20歳のAさんが、1ヵ月3万円ずつ節約し、貯金したらどうなるでしょうか?
ひと月3万円を切り詰めるのは、簡単なことではありません。いろいろなことを我慢しなければいけません。ストレスも溜まっていくでしょう。しかし、Aさんは根気強く貯金を続け、なんと30年間、休むことなく3万円を貯金し続けました。
50歳になったAさんは、今までの苦労を振り返りつつ、通帳を開きました。
「今までいろんなことを我慢してきたな。どんな誘惑にも負けず、意思を貫き通した。自分で自分を褒めてあげたいくらいだ。でもその甲斐あって、お金をためることができた。これでもう老後は安心・・・」
そう言ってAさんが通帳を開いてみると、これまでの涙ぐましい努力によって貯まったお金の残高が記載されています。その30年間の努力の結果は・・・、たったの1,080万円です。
3万円×12ヵ月 ⇒ 1年で36万円
⇒ 10年で360万円
⇒ 30年で1,080万円
1年間に200万円ずつ使ったとしても、たったの5年しかもちません。月々の出費を8万円ちょっとに抑えて、年間100万円しか使わなかったとしても、10年強でなくなってしまうのです。
これで"老後の安心"が得られるでしょうか? 答えは「No」です。
お伝えしているように、"貯める"ことも必要で、節約や貯金も大事です。しかし、将来のためにいくら節約して、いくら貯金しても、それだけで"将来のお金の不安"がなくなることはありません。
定年した時に貯金が1,000万円あっても、その先の生活は不安です。ではこれが2,000万円、3,000万円あったら不安がなくなるかというと、そうではないんです。
日本総研の調査によると、70歳以上で亡くなった方の相続資産額は、平均で3,354万円です。70歳になっても、3,000万円以上の資産を抱えているのです。つまり、使わないわけですね。
なぜか? それは「いざというときのために」です。もちろん、家族のために意図的に財産を残す人もいるでしょう。しかし「平均」を考えれば、残しているというより、使えなくて残っているものと考えられます。
3,354万円もあれば、月に20万円ずつ使っても14年間は生活できます。平均寿命から考えれば「そんなに長く生きない」と自分でわかっていたとしても、それでも将来が不安でなかなか使えません。
しかも、このうちの多くの人は年金を受給できるはずです。定期的な収入もあるわけです。それでも「使えない」のです。つまり、いくら貯金があっても将来の不安は消えないのです。