日本企業は「円安」に安住していてはいけない! 今こそグローバル経済で勝ち残るための「構造改革」を!
世界100ヵ国に輸出しているタイにあるトヨタバンポー工場 (以下全て筆者撮影)

 日本経済はアベノミクスによる円安・株高で景気が回復したと感じる人々が増えたことは事実である。アナリストや資産運用のプロも内需関連の株が好調だとか何とか言って、相場を煽っていることも事実である。

 しかし、筆者の取材では、経済のグローバル化は一層加速しており、その波に乗り遅れたら、日本経済は取り返しのつかないことになると感じている。さらに円安は日本人のマインドをさらに内向きにして、グローバル経済で戦う気概を削いでいるような気がしてならない。

 長く続く不景気の主因のひとつが円高であると言われており、円安によって「明るい日本がやって来た」と受け止めたい気持ちも分かる。為政者やその周辺にいる人々は円安を政策による効果だとPRして自分の手柄にしたいだろうし、景気浮揚の効果を訴えて今夏の参議院選挙にも勝ってその勢いで憲法を変えたいので、円安効果をことさらに吹聴するのも分かる。

 しかし、筆者は多くの国民や経営者らから反感を買うことを覚悟したうえで、円安は日本経済に必ずしもメリットになるとは限らない、ということを敢えて記しておきたいと考え、本稿を書いている。

CVT(無段変速機)の現地生産を開始するジヤトコ

 筆者は3月中旬にタイを取材で訪れた。約1週間滞在して、日本の多くの自動車関連メーカーや電機メーカーを訪問したり、関係者に面談したりした。これから書こうとしていることは、その中で見聞きしてきたことでもある。

 日本の自動車や電機メーカーは1997年のアジア通貨危機によるタイバーツの暴落を逆利用してタイを輸出拠点としてきた。トヨタはタイ工場から世界100ヵ国、ホンダも世界50ヵ国に輸出している。トヨタの連結営業利益のうち4割近くはアジアで稼いでおり、その稼ぎ頭がタイである。トヨタの収益の実に3分の1近くはタイで稼いでいると見られる。

生産準備中の変速機大手のジヤトコタイ工場

 タイは工場労働者の人件費もまだ中国沿海部の半分程度であり、労務コスト的にも魅力のある地域であった。そして非常に親日的で、特に女性が勤勉な国である。日本の製造業の牽引もあって失業率が1%を切る事実上の完全雇用の状況にある。

 また、インドの経済成長により最終消費財の市場が拡大しており、日本とインドを繋ぐ結節点としても今後重要視されてくる。日本-タイ-ミャンマー-インドで「動脈」を作れば、マラッカ海峡を回らずにインド洋に出ることも可能になるからだ。地理的にも重要な拠点であり、最近では南下を狙う中国の投資も増えている。

 タイでは日本企業による新規の投資も進んでおり、日本の直接投資が群を抜いて1位の国である。たとえば日産自動車系変速機メーカー大手のジヤトコは2013年夏にタイ工場で、燃費効率が高い制御技術を駆使したCVT(無段変速機)の生産を開始する。

 これまでは日本からの輸出で対応していたが、今後は現地生産に切り替える。従業員を新規に1400人採用して50万台を製造する。タイではエコカーブームに火がついており、CVTが多くの車に搭載され始めており、現地生産した方が得策と判断したのだ。

 ジヤトコのタイ工場では、稼働当初から、鋳造から組み立てまでを一貫で生産し、工程設計も日本の工場と同じにしている。心臓部の部品もほとんどをASEAN域内で調達し、現地での補完体制を整えている。品質技術管理センターも設立して開発の現地化も加速させる計画だ。CVTはハイテク製品ということで税制優遇の特別な恩典を受け、法人税が8年間免除、9年目以降も半額免除になった。設備輸入の関税もゼロだという。

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