山崎元「ニュースの深層」
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「除染にヤクザ」問題から、税金の無責任な使い方が見えてくる

2013年05月08日(水) 山崎 元
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巨額の公費が動く「ヤクザのビジネス・チャンス」

 5月6日の朝日新聞に「除染 群がる暴力団」という見出しの記事があった。福島県内の除染現場に、山形県内の暴力団幹部が派遣業の許可を持たずに作業員7人を派遣していたという事件を報じたものである。

 この暴力団幹部A氏は、懲役8ヵ月執行猶予3年の刑を受けた。事件後に暴力団を辞めたことが酌量されて、A氏は実刑を免れたという。

 除染にヤクザ。一般常識的には、いかにもありそうな組み合わせだ。朝日新聞の記者も、読者がそうした常識を持っていることを前提として記事を書いているように思われる。

 「ヤクザ」という言葉は、近年では一般向けの文章に不適当とされる場合が多いようだが、一般に馴染んだ言葉であり、かつ文脈によっては、集団としての「暴力団」と個別の「暴力団の組員」、あるいは両方の総称を自在に指すことができる。そういう便利な言葉なので、本稿では以下、特段の必要がない限り、「ヤクザ」という単語を使う。

 原発事故の被害に対して除染が必要なことはいうまでもないが、除染は人が集まりにくいことが予想される作業で、しかも、巨額の公費が動く。公費の支出管理が甘いのは、一般に知られた傾向だ。しかも、除染は新しい作業であり、チェック体制も不十分だ。

 朝日の記事中で紹介されている証言のように、「暴力団かどうかを気にしていたら作業員は集まらない」という事情が現場にはある。ヤクザにとっては、大いなるビジネス・チャンスだ。

 さて、この件では、自治体(福島県伊達市)がゼネコンに除染作業を発注し、千葉県の一次下請け業者、茨城県の二次下請け業者を介して、さらに山形県内の三次下請け会社に、今回の元ヤクザA氏は作業員を送り込んで賃金をピンハネした。この構図は日本社会の縮図だ。

 記事によると、発注元である伊達市の担当者は「二次下請け以下の業者は把握していなかった」と答えている。また、最初に発注を受けたゼネコンも、朝日の記事には「ゼネコン」とあるだけで、社名が出てこない。

 下請けの連鎖を作ることで、公務員は作業現場を把握せずに税金を支出する責任を逃れ、ゼネコンもまた風評の悪化を回避している。彼らは、様々な意味で汚い現場から距離を置き、立場を保護された日本社会の「上部層」に属している。

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