官々愕々
焼け太る官僚とITゼネコン

 マイナンバー法案が今国会で成立しそうだ。「国家による個人情報独占管理」、「情報漏えいでプライバシーが丸裸」などと批判されるが、実はこの法案には、次元の異なる深刻な問題がある。

 まず、この法律ができても国民が期待したことは実現しない。

 例えば、マイナンバーができても、事業経営者、農家、政治家などの脱税を取り締まることなどできない。銀行口座の名寄せもしないし、口座とマイナンバーのリンクもしない。既得権層を守るために、「個人情報保護のため民間には使わせません」と言って、銀行口座とのリンクをしない口実に使っているのだ。サラリーマンだけに厳しい不公平な税金徴収構造はそのまま温存される。もちろん政治資金の監視にも使えない。

 また、医者の診療報酬チェックにも使えない。そもそもレセプトの電子化の義務化さえ医師会の反対でできない状況だ。過剰診療・過剰投薬監視はできず、電子カルテを患者がどこでも自由に持ち歩くなどということも不可能。

 生活保護などの不正受給チェックに使うとも言われたが、そのための所得把握にも使えない。

 では、いったいどんなメリットがあるのか? 引っ越しの時に市役所に出す書類が1枚で済むなどと大きく宣伝されているが、逆に言えばその程度の効果しかない。

 マイナンバーと言えば思い出すのが住民基本台帳。システム構築に400億円近く、維持運用経費を毎年150億円程度かけてきたが、住基カードの普及率はわずか5%で、誰も知らないから身分証明にも使えなかった。カードはこのままお蔵入り。壮大な無駄使いに終わった。

 今回も同じ轍を踏むのではないか。官僚は、検討の過程で個人情報保護と情報連携基盤技術という二つのワーキンググループ(WG)だけを作った。そこには官僚とおかかえの「ITゼネコン」と呼ばれるITベンダーたちの思惑がある。

 前者のWGで「個人情報保護を徹底すべき」と綺麗ごとを並べ、後者のWGで「そのためには住基ネットとは別に巨大なシステムが必要」という結論を導く。そして、新たな連携システム構築に3000億円、その他諸費用込みで5000億円が必要などと数字をはじく。連携システムについては、新進IT企業から、せいぜい100億か200億円という指摘がなされ、今、政府は300億でできると言い始めた。10倍以上のボッタクリを狙っていたわけだが、彼らはまだ諦めていない。後述する新たな機構のシステムに数千億かかるなどと言い出している。