運航再開は決まったが、事故原因は未解明のまま!ボーイングを航空当局の調査が及ばない聖域とした「不安」
〔PHOTO〕gettyimages

 全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)を含む世界の航空8社が、6月初旬までにそろってバッテリーの発火、発煙事故が相次いだ「ドリームライナー」(ボーイング787型機)の運航を再開する。米連邦航空局(FAA)が先月19日、ボーイングの改善策にお墨付きを与えたことに伴う措置だ。航空各社やボーイング、787型機の部品メーカーの経営にとって朗報だ。

 しかし、この決定は、事故原因の可能性がある約80項目について対策を講じることで良しとしたもの。真の事故原因を特定できておらず、利用者の立場からすると、不安と後味の悪さが残る幕引きとなった。

 今回の決定は、多くの死者を出しながら、ボーイングの責任の徹底追及が行われなかった過去の墜落事故を彷彿させる。それは、1966年(昭和41年)に羽田沖に落ちたANA機(ボーイング727-100型機)と、1985年(同昭和60年)に御巣鷹山に突っ込んだJAL機(ボーイング747SR-46型機)の二つの墜落事故である。

 利用者は、当局の調査権限が十分に機能しないサンクチュアリ(聖域)と化しているボーイング機に安心して搭乗できるだろうか。

 従来の中型旅客機より格段に機体が軽く、燃費の大幅な向上と航続距離の飛躍的な延長によって、航空会社の経営を根底から変えるはずだった「夢の航空機・787型機」が、泥沼の運航停止騒ぎに見舞われる発端になったのは、1月7日に起きた発火事故だった。

 米東海岸の古都ボストンにあるローガン国際空港で乗員、乗客を降ろして駐機していたJAL機の2つある電池室のうち機体後部に位置する方の電池室のリチウムイオン電池モジュール(大型のリチウムイオン電池を8個連結したもの)から火が出たのだ。

 ボストンと成田を結ぶ路線は、LCC(格安航空会社)との安売り競争を避ける戦略を採るJALがドル箱に育てようと注力している路線だ。この路線が、7機保有する787型機の航続距離の長さを活かすことができるからである。それだけに、当時、JALは発火事故に大きな衝撃を受けた。

 そして同月16日。今度はANAの山口発羽田行き787型機の前部電池室で煙を検知する事故が発生し、同機が高松空港に緊急着陸する事態になった。ANAは世界に先駆けて787型機を17機導入しており、その燃費のよさをテコに大胆な経費カットを進めようとしていた矢先の重大事故である。ANAも、やはり驚きと落胆の色を隠せなかった。

 ANA機のトラブルの直後、事態を重視したFAAは、対策が完了するまでの間、787型機の運航を停止する命令を米国内向けに出すとともに、各国の当局にも同様の措置を採るよう促したのだった。

原因究明の難航

 この二つの事故は、場所こそ前部と後部の電池室で異なるものの、同じ規格のリチウムイオン電池モジュールが丸焼けになった点で共通している。

 日米の航空当局は事故の調査に乗り出したが、当初から原因究明の難航が予想されていたのも事実だ。

 その理由は、787型機の最大の特色である大胆な軽量化を可能にした新素材、新技術の検証が容易でないためだ。

 ちなみに、787型機では、素材の面で鉄の4分の1の重さで10倍の強度を持つという炭素繊維やチタンなどの複合材が多用されているほか、機械制御から電気制御に切り替える新技術が採用されている。材料が従来通りのアルミ合金では軽量化に限りがある。翼のフラップの制御も、機械式のワイヤーを多用した油圧システムから、細くて軽い電線に電気を送ってモーターで制御する仕組みにした方がずっと軽量化できるという事情があった。

 余談だが、素材では東レの炭素繊維が採用され、その加工は翼部分を三菱重工業と富士重工業、胴体部分を川崎重工業が担当。

 また、電気制御を増やすだけでなく、電気自動車やハイブリッドカーで普及しているリチウムイオン電池を初めて航空機用のバッテリーとして搭載した。従来のニッケルカドミウム電池より軽量だからである。その供給は、日本のジーエス・ユアサが担当した。

 さらに付け加えると、離着陸時に使う車輪のタイヤもブリヂストン製だ。

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