自民大勝で終わった参院補選はなにを意味するのか?安倍総理のお膝元で進む“民意なき原発建設"への疑問 【取材・文/堀潤】

 4月28日、山口県で行われた参議院補欠選挙。

 自民党公認の前下関市長、江島潔氏(56)が、民主党前衆議院議員で、今回無所属で出馬した平岡秀夫氏(59)に15万票以上の差をつけ当選した。

 山口県は、建設計画が宙に浮いている上関原発の問題を抱えている。

 原発推進に前向きな自民党・安倍晋三総理大臣のお膝元で、どのような選挙戦が行われるのか、夏の参院選を占う天王山だと報じるメディアもあった。

 産經新聞は投開票日翌日の29日「無惨に散った“脱原発"平岡氏」と見出しを付け『「安全な原発は再稼働すべきだ」というのが、静かなる民意だと受け止めるべきではないのか』と、選挙結果を分析した。

 しかし、選挙期間中、山口県内各地を訪ね有権者の意識を取材した筆者の感想は全く異なる。そもそも、今回の参院補選で原発問題が争点になることはなかった。

 平岡氏は「脱原発を争点に闘いたい」と選挙戦で訴えたが届かなかった。対する自民党は、去年の県知事選挙で推した山本繁太郎現知事が「危ない原子力発電所であれば、建設させるわけにはいかない」と訴え勝利した経緯から、それと矛盾が生じないように、今回の補選では原発問題を争点にしない作戦に出た。

 マスコミ各社が行った出口調査の結果を見ると、有権者の関心は「景気・雇用対策」「医療・福祉」が概ね半数を占め、原発を含むエネルギー問題への関心は1割を少し超えた程度だった。

 参院補選での自民勝利は、原発の是非を問うた結果ではない。

 しかし、建設予定地となっている上関町では「民意を受けた建設工事の早期着工を」という声が次第に大きくなってきている。 脱原発を掲げた山本知事の態度の変容も早速指摘されている。

 安倍総理大臣のお膝元山口県で、今、何が起きているのか。

 マスメディアが報じない現場の実態を報告する。

最低クラスの投票率から読み解く、上関原発問題

「選挙ですか?盛り上がりませんなぁ」

 4月22日夜。

 去年暮れに開港したばかりの岩国錦帯橋空港からタクシーに乗って岩国市内のホテルに向かった。所々空き店舗が目立つ商店街を眺めながら、地元出身だというタクシー運転手の60代の男性は選挙戦についてこう感想を漏らした。

「知事選、衆院選、そして今回の参院補選でしょう。選挙疲れもあるんじゃろうねぇ。今は、アベノミクスでしたっけ、あれがどうなるんかが一番の関心違いますか?」

 今回の参院補選。投票率は38.68%で、前回よりも20ポイント以上落ち込んだ。

 選挙管理委員会によると、山口県の有権者数は118万9665人。当日の投票者数は46万131人と低調だった。

 12万人の有権者を抱える宇部市では、過去最低だった昭和62年をさらに10ポイント以上下回るなど過去最低を更新。その他の町でも投票率は大きく下がった。

 そうした中、県内で最も投票率が高かったのは原発の建設予定地となっている上関町の67%。有権者数は3200人あまりだ。国からの交付金や電力会社からの補償金をあてにしている町では、推進派の町長自身が自民党候補の選挙カーに乗り込み演説をしてまわるという力の入れようだった。

 町長の「自民党が勝てば、これでようやく計画が進められる」というスピーチは、地元では大きな拍手を持って迎えられたが、町外に出れば、原発問題への関心は驚く程低かった。

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