野球
二宮清純「日ハム武田勝の“失うことで得られるもの”」

 4月28日のオリックス戦で北海道日本ハムのサウスポー武田勝投手が今季、初勝利をあげました。6回1安打無失点。完璧に近い内容でした。

オンリーワンのスライダー

伸びた右腕と“くの字”に曲がった左腕

 武田投手の調子のバロメーターは内野ゴロの数で計ることができます。この日は18のアウトのうち、実に半分の9つ(犠牲バントひとつ含む)がゴロでした。

 武田投手の最大の武器はスライダーです。右バッターの懐をえぐり、左バッターに対してはスッと逃げていきます。かつて巨人の坂本勇人選手は、武田投手のスライダーを評して「一度ヒューンと外に飛んでいって途中でガンと内側に食い込んでくる」と語っていました。

 独特の変化の秘密、それは武田投手のヒジにあります。アマチュア時代に何度も故障した武田投手のヒジは“くの字”に曲がっています。欠けた骨がくっつき、そのまま固定されてしまったそうです。

 ところが、人間、何が幸いするかわかりません。“くの字”型のヒジが、独特の腕の振りを武田投手にもたらせ、オンリーワンと呼べるスライダーの獲得につながったのです。

 独特の変化はスライダーだけではありません。切れのいいシュートもまた、武田投手の武器のひとつです。
「真っすぐの握りでわざと手首を寝かすだけでボールは勝手にシュートしてくれる。ひねらなくてもいいんですよ」
 涼しい顔で、武田投手は、そう語っていました。

 話を戻しますが、内野ゴロの多さはスライダーとシュートのコンビネーションの妙を物語っています。バットの芯をはずすピッチングこそが、武田投手の持ち味なのです。