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連続追及 第9弾 PCなりすまし事件 やっぱりひどい!自白強要なんて朝飯前 取調官は「冤罪検事」と呼ばれる男

 冤罪で有名な「布川事件」で無期懲役を求刑した検事。元高検検事長を「ウソの自白」へと「完落ち」させた検事。この2名が中心となって進められてきた検察の捜査で、再び冤罪が作られるのか。

わずかな抵抗も許さない

 その日、片山祐輔さん(30歳)が東京湾岸警察署内の運動場に出ることを許されたのは、朝の8時頃だった。すでに2ヵ月以上が経過している留置場生活で、片山さんは普段、朝7時頃に運動場に連れて行かれる。だが、4月11日に限っては、その時間がいつもより1時間も遅かった。

 軽い体操を終えた片山さんは係官に「刑事さんから話がある」と声を掛けられ、別室に通された。片山さんは再々逮捕を覚悟した。そこで片山さんを待っていたのは、約10人の刑事だった。その部屋には車椅子が用意してあるのも見えたという。片山さんが自分の足で歩こうとしない場合、車椅子に乗せてでも連れて行こうとしたのか。片山さんはそこから刑事課の部屋へ連れて行かれた。

 片山さんはすでにハイジャック防止法違反などで起訴・立件されているが、この日、威力業務妨害などの容疑で再逮捕されたのだった。逮捕状が執行され、指紋と写真をとられた。片山さんが主任弁護人である佐藤博史氏に話したところによると、取調室で刑事にこう言われたという。

「被疑者には取り調べ受任義務があり、取り調べに応じなくてはならない。話さないと君が不利になるかもしれない。録画は法律上の義務ではないし、警察は本件で録画する気はない。録画なしには取り調べに応じないというのは、君自身の考えか?」

 片山さんと弁護団は「可視化」が行われない限り、警察と検察の取り調べを受けないと明言してきた。

 一方で、片山さんらは可視化が行われるのであれば、黙秘権を行使することなく、取り調べに応じることも約束している。だが、警察と検察が可視化に応じる素振りは今のところ、まったくない。

 警察と検察が密室である取調室で強引な取り調べを行い、自分たちに都合のいい"自白"を強要してきたことは、これまで何度も問題とされてきた。

 容疑を否認する被疑者を長期勾留し、時には怒鳴りあげ、時には情にからめて身に覚えのない犯罪事実を認めさせる—。事実、今回の遠隔操作ウイルスによる一連の事件でも、無実の明治大学学生が被疑事実を認め、静岡家裁で保護観察処分を下された。

 しかも今回、片山さんの取り調べにあたった上本哲司検事(写真上)には、一般市民を強盗殺人犯に仕立てようとした過去がある。冤罪事件として名高い「布川事件」で、上本検事は「無期懲役」を求刑したのである。

 布川事件—。

 '67年、茨城県利根町布川で大工の男性が殺害された。警察は桜井昌司さんと杉山卓男さんを別件で逮捕。容疑を"自白"したとして、検察は強盗殺人罪で起訴した。二人は「自白は強要されたもの」として容疑を全面否認したが、'78年、無期懲役の判決が確定した。

 二人は'96年に仮釈放された後も身の潔白を訴え続け、弁護団の丹念な証拠開示請求によって、事件現場に二人の痕跡が残されていないこと、検察が証拠とした自白テープに改竄の跡が見られることなどが新たに判明。そして'05年に水戸地裁が、「有罪とした証拠の信用性に疑問が生じた」として再審開始を決定した。この時点で、二人が無罪になることはほぼ既定路線と思われた。

 だが、'10年に始まった再審の公判で、当時、水戸地検の三席検事だった上本検事は無期懲役を求刑したのだ。もちろん、でたらめな「自白」しか証拠を持っていない検察の主張が通るはずもなく、'11年、桜井さんと杉山さんの強盗殺人容疑について無罪が確定した。逮捕勾留から44年かけて、ようやく無実が証明されたのである。

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