官邸周辺でくすぶる「消費税増税延期論議」!参院選に向けた「人気取り策」の代償はいかに?

 「安全策として(消費税の増税を)1年ぐらい延ばすのもいいのではないか。せっかく上がりかけた景気が増税でぽしゃってしまう例は、日本の歴史だけでなく、世界の歴史にもある」――。“アベノミクスの指南役”と呼ばれる浜田宏一内閣官房参与(エール大学名誉教授)が4月初めにロイター通信のインタビューで発したこの一言が波紋を広げている。

 7月に参議院議員選挙が迫っていることもあって、来年4月の消費増税の景気に対する悪影響を懸念する声が政府首脳たちの間にあがり始めているのだ。しかし、そうした議論が「燎原(=りょうげん)の火」の如く広がれば、せっかく好スタートを切ったデフレ脱却作戦の腰を折りるという本末転倒の事態を招く危険もありそうだ。

経済財政諮問会議で飛び出した菅官房長官の発言

 浜田参与が“爆弾発言”をしたのは、黒田日銀の「異次元の量的・質的金融緩和」を受けた市場の興奮状態が冷めやらぬ今月9日のこと。

 インタビューでは、まず、浜田参与の持論でもある大胆な金融緩和について、「日銀が採用したのは画期的」と高く評価してみせた。そのうえで、今後の成否については、「(2%の物価目標を)2年で達成できるかはわからない。財・サービスや消費、投資、雇用などにどれだけ的確に早く(効果が)及ぶかがこれからの問題だ」と楽観するのは時期尚早で、目配りすべき問題はたくさん残っていると発言した。

 すかさずインタビュアーが「景気の先行きは不確実性が強いということか」と質すと、浜田参与は「来年4月に消費税を上げても大丈夫かは、今後をみてみないとわからない。安全策として1年くらい延ばすのもいいのではないか。せっかく上がりかけた景気が増税でぽしゃってしまう例は、日本の歴史だけでなく、世界の歴史にもある。ブレーキをかけて歳入(税収)の上昇が止まれば、消費税は率を上げただけで、何のためにもならない。財政の大盤振る舞いをしない限り、輸出業者からの儲けが国庫に入ってくるので、それを財政に使わずに貯める方向でいいと思う」と述べたのだ。

 浜田参与にとって「異次元緩和」は、我が子のように可愛い政策なのだろう。インタビュアーから景気が腰折れした時に日銀が取り得る追加策の有無を問われて、「例えば国債をすべて買い切るつもりでやってもいい」といくつかの手段の存在を列挙しながら、「問題は行き過ぎた場合にうまく止められないと、引き締めなどで(政策が)ギクシャクする。行き過ぎないよう、なだらかに収めることができれば名人芸だ」と、実際の調節の難しさを親切かつ丁寧に説明した。

 こうしたインタビューの文脈から読み取れるのは、デフレからの脱却を目指す壮大な社会実験を始めた以上、かく乱要因になり得るものはなんであれ排除したいという、浜田参与独特の「異次元の金融緩和」への強い思い入れだ。消費税の増税論議も、その延長線上に出て来る話となっている。

 政府筋によると、こうした浜田参与の思いは、安倍晋三首相を始め、官邸の幹部たちに少なからぬ影響を与えているという。

 その代表格が、早くも実力派大臣として官邸で睨みを効かせている菅義偉官房長官だ。長官は、4月22日の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)の席上、居並ぶ経済の専門家たちに重大な疑問を投げかけた。

 2015年の達成を目指す政府の財政健全化目標の先送りを示唆したとして注目を集め、テレビで取り上げられた発言がそれである。

 先週後半に公表された議事要旨によると、菅長官は最初に「やはり2015 年のプライマリーバランスの半減は、現実的に2年である。この提案は、骨太のときに、もう一度きちんと考えるという理解でよいのか。私どもは約束しているが」と、財政健全化目標を先送りする必要がないか問いかけたのだ。

 これに対して、日本総合研究所の高橋進理事長が「(デフレ克服との)両立」の必要性を説いたところ、再び菅長官が「余り固定化しないで、もう少し様子を見ていってはどうか」と迫ったという。

 この議事録の公表を受けて、テレビ朝日は、甘利経済再生担当大臣の「目標はそのまま堅持する」という発言を引き合いに出して、菅長官の発言は現段階では政府の総意でないとする報道を行った。

 そして、財政健全化目標の達成には、消費税の増税のほかに、GDP(国内総生産)の名目3%の成長が必要なこと、さらに1兆円程度以上の社会保障費の歳出削減が不可欠なことを指摘して、実際には、その実現が容易ではない状況にあることも強調したのだった。

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