「人間対コンピュータ将棋」頂上決戦の真実 【前編】 対局3日前、「棋界の武蔵」三浦八段が漏らした本音文/山岸浩史

2013年04月29日(月)
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金子知適さん(左)らGPS開発者チームは別室でパソコンを操作

 「枝が全部、赤になるのがこちらの理想。そうすれば勝ちですからね」
と、GPS開発者の1人、金子知適さんは笑う。【※訂正1】

 この勝負がGPSと開発者にとってどんな意味をもつのかを聞いてみると、金子さんは柔和な表情はそのままにしばらく沈黙したあと、ようやく口を開いて意外なことを話しはじめた。

 「棋士の文化と、われわれ研究者の文化は違うんですよ」

 ぶ、文化、ですか?

 「棋士は『この一局の勝負にすべてが懸かっている』と考えます。だけど私たちは『1000局指してみないと本当の強さなんてわからない』と考えている。一局だけでは、出来不出来がありますからね。

 研究者はいつも、誤差のかたまりを相手にしているんですよ。だから今日の結果で、コンピュータのほうが強いとか、人間のほうが強いとか、そういうことはまったく考えません。負かされて、修正すべき点が見つかればそこを直す。その繰り返しです。

 人間を超えようなどとは思っていません。ただソフトを強くしたいんです。5月のコンピュータ将棋選手権が近づけば、今日のこともたぶん忘れてしまうでしょうね。【※訂正2】人間には負けても、ほかのソフトにだけは負けたくないんです」

 たしかにそれは、棋士たちとも、いつのまにか勝負のゆくえに気が気でなくなっている私とも、まるで違う「文化」だと思った。

 「でも、棋士の『この一局』という気持ちもわかります。だから、対局室でパソコン操作をして、三浦さんがマウスの音を気にされるといけないので、私は外で操作することにしました。それから、670台の大規模クラスターにしたのも、せっかくの特別な舞台ならそのほうが面白いと思ったからなんです」

【訂正1】金子氏より、この発言は金子氏および他のGPS将棋開発者の方のものではないこと、また、「笑う」という表記に対応する事実もこのタイミングにはないとのご指摘がありました。検討いたしましたところ、ご指摘のとおりですので、この部分を次のように訂正します。→〈枝がすべて赤になれば、GPSの勝利となるわけだ。〉
【訂正2】金子氏の発言趣旨を筆者が誤認しておりましたので、この部分を次のように訂正します。→〈5月のコンピュータ将棋選手権でもし負けたら、GPS将棋のことも皆から忘れられてしまうでしょうね〉
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