賢者の知恵
2013年04月29日(月)

「人間対コンピュータ将棋」頂上決戦の真実 【前編】
対局3日前、「棋界の武蔵」三浦八段が漏らした本音

文/山岸浩史

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人間が機械と引き分けて泣く日が来ようとは・・・

 「人間がコンピュータに負けちゃ、だめだよね?」

 高校生になったばかりの息子がニュースを見ていてそう問いかけてきたのだけど、どう答えたものだろうか---ある友人からそんなメールが届いたのは、4月19日の夜だった。親子ともに、将棋についての知識はほとんどない。そして、その息子さんは「人間」を応援するニュアンスでそう言ったのだという。

 将棋のプロ棋士が初めてコンピュータに敗れたことは新聞やテレビでも大きく報道されているが、その事実をいったいどう受けとめればよいのか、たしかに将棋を知らない人にはわかりにくいだろう。

 煙草を吸いながら、考えた。だが、何本吸っても、しっくりした答えが浮かばなかった。結局は、こんな問題先送りの返信しかできなかった。

 「ちょうど明日、電王戦第5局の取材に行くことになってるから、そこで考えてみるよ」

***

 5人のプロ棋士と5つのコンピュータ将棋ソフトが戦う第2回電王戦は、開幕前から大きな注目を集めていた。だが私は最初、ほとんど興味を持てなかった。プロ棋士がコンピュータに負けるのは「時間の問題」だと思っていたからだ。

 すでに昨年の1月、第1回電王戦で米長邦雄が敗れている。引退後とはいえ、米長はひとつの時代を画した大棋士だ。

 2007年には、将棋界の最高タイトル「竜王」を保持する渡辺明が戦い、辛勝したものの、「一時は負けを覚悟した」とまで語っている。コンピュータの実力は、もうとっくにプロ棋士と互角と見るべきなのだ。

 5局も指せば、1人か2人は負けるに決まってるだろ・・・いまさら勝負に一喜一憂する意味が見いだせず、周囲の将棋仲間が熱く予想を語るのを、なんとなく鬱陶しくさえ感じていた。

 しかし---いざ始まってみると、そんな醒めた目はいやでも見開かされた。

【訂正】GPS将棋開発者の金子知適氏より、本文中の金子氏の発言に関する記述に2ヵ所、事実と違う点があるとのご指摘をいただき、検討しましたところ、筆者の誤認であることがわかりましたので、訂正いたします(該当箇所に注釈があります)。金子氏に多大なご迷惑をおかけしましたことを、謹んでお詫びいたします。
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