『対中戦略 無益な戦争を回避するために』(近藤大介著)
~第1章より「仕掛けられた反日デモ」他抜粋~

尖閣問題の真相を知り、中国の野望と弱点を具体的に分析すれば日本が採るべき「対中戦略」が見えてくる! 中国の野望とは? 弱点は? --- 「日本一、中国を知る男」がすべてを明らかにする!

船橋洋一氏絶賛!!
「徹底した現地取材と鋭い洞察。日中関係出直しに必読の書だ!」

孫崎享氏激賞!!
「中国の弱点を暴き、習近平の中国と渡り合う道を提言する意欲作」

【はじめに他】はこちらをご覧ください。

仕掛けられた反日デモ

 実際、野田首相が9月11日に「尖閣国有化」を果たすや、中国全土110ヵ所で一斉に、反日デモの嵐が吹き荒れた。前出の中南海関係者が解説する。

 「当時、全国の公安(警察)を統轄していたのは、中共中央常務委員(序列9位)の周永康・政法委員会書記だった。江沢民の遠戚としてトップ9の末席に上りつめた周永康は、失脚した薄熙来の親友で、薄と共に"黒い噂"の絶えない人物だった。

 そこで江沢民に尻を叩かれ、日本の尖閣国有化を千載一遇のチャンスとばかりに、胡錦濤一派に対して反撃に出たのだ。すなわち、本来なら反日デモを取り締まるはずの公安組織を逆に煽って、反日デモを後押ししたというわけだ」

 「北京の日本大使館が危ない」─。この一報を聞いた私は、直ちに北京へ向かった。日本大使館前で最も激しいデモが繰り広げられた9月15日、朝から晩までこのデモ隊の中に紛れて取材した。そこで見えてきたのは、生活苦に悩む若者たちの実態と、彼らを利用して反日暴動を煽った「中国当局の影」だった。

 この「最も激しかった一日」を、改めて振り返ってみよう。

9月15日午前7時半、亮馬橋路にある日本大使館から500メートルほど西の地下鉄10号線「亮馬橋駅」のB出口から地上に上がると、青年たちが続々と集まってきて、たちまちその数300人くらいに膨れ上がった。

『対中戦略 無益な戦争を回避するために』
著者=近藤大介
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 仲間同士で連れだって来た若者もいるが、一人で来た者も少なくない。彼らに共通しているのは、かなりみすぼらしい格好をしていて、目が血走っていることだ。

 その中の一人に話しかけると、次のように答えた。

 「河南省から北京へ出てきて内装工事の左官をやっているが、このところの不況で仕事はさっぱりだ。『工体』(地元サッカーチーム『北京国安隊』の本拠地の国立競技場)で叫ぶには入場料が25元かかるが、"鬼子"(日本の蔑称)の大使館前で叫ぶのはタダじゃないか。おまけに英雄扱いされるから、スカッとするのさ」

 この青年に、「釣魚島(尖閣諸島)についてどう思うか」と水を向けると、「そんなもの興味ねえよ!」と吐き捨てた。