特別対談 髙橋洋一×長谷川幸洋×麻木久仁子
第1部 黒田日銀新体制で景気は本当に良くなるのか?

アベノミクスとTPP キーワードは"後白河法皇"と"合コン"だ
左:麻木久仁子 中:高橋洋一 右:長谷川幸洋
※この原稿は、3月19日午後7時半~8時40分までニコニコ生放送の「ゲキbiz田原チャンネル」で放送された鼎談番組『日銀新体制で日本の景気は本当に良くなるのか』を書き起こしたのものです。『アベノミクスとTPP――キーワードは「後白河法皇」と「合コン」だ』と改題し、電子書籍として販売しています(定価250円)。ここでは、そのエッセンスをご紹介します。             http://amzn.to/18tfuOz


はじめに

 現代ビジネス(Gbiz) 講談社「現代ビジネス」の動画番組、本日は「日銀新体制で日本の景気は本当に良くなるのか」と題しまして、お届けいたします。本日ご出席いただくのは長谷川幸洋さん。

長谷川 こんばんは。

Gbiz 長谷川さんは東京新聞論説副主幹ですね。それからご存知、髙橋洋一さん、嘉悦大学教授。

髙橋 こんばんは。

Gbiz 今日は司会進行役として麻木久仁子さんにお越しいただきました。

麻木 よろしくお願いします。

Gbiz 今日は3月19日、実はけっこう歴史的な日です。日本銀行の白川方明(まさあき)総裁が任期を若干前倒しして正式に退任された。そして、明日20日が春分の日で休日なので、正式には明後日から黒田東彦(はるひこ)総裁のもとで日銀新体制がスタートし、いよいよアベノミクスのリフレ政策が進むのか、というところだと思います。

 ご存知のように、髙橋洋一さんは10年以上も前からインフレ・ターゲットの導入をせよと訴えてきたリフレ派の第一人者。今回、副総裁になりました岩田規久男さんとも長いつきあいで、「アベノミクスの裏の司令塔」という評判もあります。

 実は髙橋さんは今回、『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』(講談社、税込1260円)という本を緊急出版されました。

髙橋 宣伝です、すいません(笑)。

Gbiz 3月27日発売です。ぜひ、みなさん、お読みいただければと思います。

 それから長谷川幸洋さん。長谷川さんのこともみなさん、ご存知かと思いますが、安倍晋三総理とは、折に触れて電話をする仲ということで、安倍さんのブレーンの1人と言ってもいいのではないかと思います。

長谷川 いや、いや、違います。取材してるだけです(笑)。

髙橋 この間、ニコ生放送中に電話したじゃない(笑)。

麻木 えーっ、ニコ生で。

髙橋 しちゃったんだ、1回。

Gbiz 生電話でしたね。去年の12月16日総選挙の日ですね。開票速報番組を「現代ビジネス」でやっていて、夜の11時頃でしたでしょうか。

髙橋 やめなさい、って言ったのに、しちゃったんだ、電話を。

長谷川 そしたらご本人が出てきた。

Gbiz 安倍さん、長谷川さんが電話したら「現代ビジネス」の総選挙開票番組に生出演しちゃったんですよね。さすが、ブレーン(笑)。で、そんな長谷川さんも今年の1月18日に、『政府はこうして国民を騙す』という著書を出されました。

長谷川 ええ、18日。私の誕生日です。還暦の誕生日に出したという(笑)。

麻木 おめでとうございます、って言わなきゃしょうがない感じになってますけど(笑)。

Gbiz 政府はこうして国民を騙す』(講談社、税込1000円)。おかげさまで大好評です。まだお読みでない方はぜひ、読んでいただければと思います。

 さて、宣伝はここまでにして、本日のテーマについて簡単に説明させていただきます。黒田新体制になって、リフレの期待がますます高まってくるということだと思います。すでに、黒田さんが新総裁に就任することがほぼ確実視され始めた3月初旬から、円安・株高がどんどん進んでいるということを見ても期待の大きさがよくわかると思うんですが、その一方で黒田さんは財務省出身ということなので、実はリフレ派の仮面をかぶっているだけなんじゃないか、いずれ財務省の本性を現すんじゃないかというようなことを懸念している人もいると聞いております。今日はそんなことも含めて、なぜ日銀総裁がこういう人事になったのか、その裏話のようなものをぜひ、お二人にはしていただきたいなということと、今一番ホットな話題でありますTPPの話、それを後半にはしていただければと思います。

 ご紹介が最後になりましたが、麻木久仁子さんもリフレ派の先生たちと共著で『日本建替論 100兆円の余剰資金を動員せよ!』(田中秀臣・田村秀男、藤原書店、税込1680円)というご著書を出されておりまして、リフレのことも大変よくご存知ですので……

麻木 えー、なんとなく巻き込まれ感が(笑)。

Gbiz バリバリ、どしどしお二人に突っ込んでいただければと思っています。では麻木さん、どうぞよろしくお願いいたします。

気分が変われば、実態が変わる。それが経済

麻木 それでは不肖私、今日は聞き手を務めさせていただきます。

 私は経済の理論とか、そういうことはもうさっぱりわかんないんで、素人くさいことも聞くと思うんですけど、円安・株高が進んで、世の中、空気が春と共にやっぱり良くなるのかなあ、と。景気が少しいい感じになりつつあるのかなっていう感触はなんとなく今、ありますよね。

長谷川 賃上げのニュースもちらほら出てきているしね。ほら、この間、トヨタや日産が春闘で満額回答。大企業だけだけど、賃上げが来たでしょ。それから学生の募集もちょっと上向いてるんじゃないですか。みんな、期待先取りだと思うんだけど、すごいなと(笑)。

麻木 期待感が実体になっていく感じですね。景気の気は気分の気なので、期待感がなければ何も生まれないということだと思うんで、私は、いいことだなって思いながら見ているんですけど、でもその一方で、例えば民主党の細野豪志さん(幹事長)などは、「みんな、景気がいいとか言ってるけど、これは子どもたちの財布から抜いて、先に使ってるようなもんだ」という趣旨のご発言をしていて……。

長谷川 ちょっとひどい発言だね、それは(笑)。

麻木 でも、そういうレトリックっていうか、そういう論理って、ずっと以前からあるじゃないですか。財政再建のときの話でもそうだけど、イケイケドンドンでやろうとすると、「いや、そういうやり方だと、あなたはいいけど、未来の子どもたちにツケを回すことになるんだよ」とか。

髙橋 そんなこと言ってるから選挙に負けるんだ(笑)。トンチンカンなんだよ。だって、まだ補正予算ができたばかりで、財政支出してないんですよ。だから全然付け回ししてないじゃないですか。

麻木 だけど、民間のお金でも、要は景気よくなるわと思って、私が私の財布からお金を使ってしまえばうちの娘や、さらにうちの娘の子どもに借金を残してしまうと……。

長谷川 いやいや、まだそこまで行ってないわけ。つまり日銀の話もそうなんだけど、安倍政権になってやったことは何かっていうと2%物価安定目標を導入しますと言って、これを日銀に飲ませた。これはたしかにできた。でも金融緩和については、まだ始まってないんですよ。日銀券はまだ市場にワーッと出てはいないわけ。それから今ご指摘の財政の話だけど、財政もまだ新年度予算審議を国会でやってるばっかりで何も使ってない。まあ、補正予算はちょっと使ったけど、マネーはまだ本格的には出ていない。

 要するに、お金を本当に使い始めると、もちろん景気は良くなると思うんだけど、今のこの局面のすごくおもしろいところは、お金は使わずに口だけで2%のインフレ・ターゲットやるぞ、がんばるぞと言っただけで株高・円安になっちゃったということ。すごいことですよ、これ。

麻木 みんなの気分が変われば、こんなに数字が動くっていうのは、たしかにびっくり。

長谷川 うん。これはちょっと私も思い出せない、こういう例。あるかね。どう?

髙橋 いや、経済理論から言えば、全然不思議じゃない。だって私、この話を10年以上も、言ってたんだよね。経済理論から見ると先に気持ちが変わって、あとから実態がついてくるっていうのは当たり前の話。だから全然不思議じゃない。金融緩和すると言ったら為替が安くなったでしょ。為替が安くなると輸出企業はこれだけで儲かるわけ。それから、お金を刷るって言ったら、株が高くなったでしょ。株が高くなったからって、だれも損してないわけ。株価が上がって含み損がなくなったり、含み益が出たりすれば、株を持っている人の気持ちは豊かになるし、「資産効果」って言って、懐に余裕が出る。経済ってそういうものでね。みんなが動き出すと、だれも損しないで膨らむんですよ。

 細野さんの話は、全体を膨らませないで、限られたパイの中から取ってきたら、取られたところが減っちゃうっていう発想でしょ。要するにちっちゃい話で、全体を膨らまさないで一定に固めて、そこから、どこかから持ってくるっていう話で、そういう発想しかしない人には、全体を大きくするということの意味が絶対わからない、これ。はっきり言って、全然わからない(笑)。

長谷川 つまりだれの所得を先取りして、それで景気が良くなったというふうに発想しちゃうんだけど、それは全然間違いで、株が高くなるっていうことは例えば同じ100円の株が150円になりましたって、こういう話なので、時価総額が上がるっていう話だから、これはだれも損してないですよ。

髙橋 今後は、実際に経済が動き始めるわけ。株が高くなるでしょ。株が高くなると株を持ってる人っていうのは「資産効果」で財布が緩んで、本当に消費するようになる。これは要するに半年から1年半ぐらいの間でどのくらい消費するかで、だいたい計算できるわけ。

麻木 へえーっ。

髙橋 できますよ。だってプロだもん。だから株価が例えば10%高くなったら消費は0.4%増える。こんなもの、言えるんですよ。計算できるの。だから、そうなると本当にお金を使い出してきて、経済が回ってくるわけ。それが経済理論なの。

長谷川 それがもう現実に起きてるような感じでね。

髙橋 ちょっとずつ起きる。

長谷川 実際、高級車が売れ始めてるんだよね。例えば、リニューアルしたトヨタのクラウンが今、すごい売れてるらしい。それからデパートで高級時計の、10万円、あるいは20万円もするのが売れてるの。

髙橋 今はまだちょっとずつなんだけど、1年半ぐらいたつと私がさっき言った数字になるよね。為替とGDPについても簡単に計算できて、為替が10%安くなるとGDPが0.2~0.6%ぐらい増えるの。こういうの、経済理論だから、プロはみんなわかってる。

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