「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第2回】 ~欧州はいまでも債務危機なのか?~

〔PHOTO〕gettyimages

 欧州経済はますます混迷の度を深めている。2012年10-12月期のユーロ圏の実質GDP成長率は季調済年率換算で-2.4%の大幅悪化となった。ユーロ圏のマイナス成長は5四半期連続である。

 債務危機に揺れるギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリア等はいうに及ばず、2012年10-12月期には、ユーロを支える中心国であるドイツ、フランスも、遂にマイナス成長に転落した(ドイツは-2.3%、フランスは-1.2%)。

 ドイツの経済閣僚や中央銀行幹部(ブンデスバンク)らは、揃って、今年の秋口には景気は底を打ち、来年は景気回復が加速すると楽観的な見通しを示しているが、直近時点までに発表された経済指標をみる限り、回復の兆しは皆無である。この楽観的な見方は希望的観測か、大本営発表であろう。

 欧州経済の危機的状況はユーロ圏にとどまらない。イギリスの2013年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率で+1.2%と2012年10-12月期の-1.2%からプラスに転じたものの、状況はよくない。

 実質GDPを長期トレンドでみると、リーマンショック後、極めて緩やかな上昇トレンドで推移しているものの、昨年8月に開催されたオリンピックの特需を控除すれば停滞しているといってよいだろう。このところ、建設投資の減少が著しく、これは、今後のイギリス経済が、オリンピック需要剥落の反動でさらに悪化することを示唆しているかもしれない。

 その他、スウェーデンも同時期の実質GDP成長率はゼロ、中東欧諸国では例えばチェコは同-0.7%で4四半期連続のマイナス成長となっている。

実体経済低迷の共通項は銀行貸出の減少

 ところで、日本での欧州の経済危機の報道はといえば、先日の、キプロスの経済危機に代表されるように、ユーロ加盟国ばかりに焦点が集まっている。

 だが、ユーロ危機に際しては、金融市場で、「次のギリシャはどこか?」という「弱い者探しゲーム」が繰り返し行われ、「ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリア」と国債価格暴落のターゲットとなる国が次々と入れ替わったが、キプロスがターゲットになったことで、随分スケールダウンした印象が強い。

 キプロスの次は、スロベニアではないかという憶測も飛び交ったが、いずれも経済規模が極めて小さい国であり、ユーロ圏のソブリン危機も「ネタ切れ」の様相を呈してきたようだ。現に、世界の金融市場に対するインパクトも小さくなった。

 それよりも、より深刻なのは、欧州の危機がこれまでの危機のCriteria(基準)に合わない国にまで波及しつつある点だ。

 筆者がこれまで危機に見舞われたユーロ加盟国の共通項を調べてみたところ、(1)「対外」公的債務残高のGDP比率が60%以上(あくまでも「対外」公的債務である点に注意)で、かつ、(2)経常収支が赤字である国、という結果となった。

 だが、最近、金融市場では、次に危機を迎える国の候補として、「FISH(フランス、イタリア、スペイン、オランダ)」の存在がまことしやかに噂されている。つまり、新たにフランスとオランダが加わったのだ。

 このうち、フランスは対外公的債務残高のGDP比率が60%を超えており、かつ、経常収支赤字国であるため、従来から、債務危機国に入ってもおかしくなかった国である。筆者もフランスが次なるターゲットになれば、従来のソブリン危機が復活する可能性があると考えてきた。

 だが、一方、オランダは、対外公的債務の対GDP比率は約36%、経常収支の対GDP比率は+9.7%であり、前述の基準では、債務危機を迎えるはずのない国である。どうやら、金融市場の欧州危機に対する関心事が変わってきたのではないかと思われる。

 そこで、ユーロ圏に限らず、欧州の経済指標をみると、実体経済低迷の共通項として、銀行貸出の減少、ないしは低迷が浮かび上がってきた。

 例えば、前述のイギリスで最近発表されたばかりの「貸出の傾向(「Trend in Lending」)」によれば、2012年2月時点のイギリスでの商工業向けロ-ン残高は前年比-3.1%、個人向けが+0.6%となっている。この結果、通貨供給量も2011年以降、前年比減少傾向が続いている。

 フランスやドイツ、中東欧諸国も同様である。この銀行貸出の低迷が、設備投資などの企業活動にネガティブな影響を及ぼし、それが雇用環境の悪化や消費(特に耐久消費財需要の減少)へと波及しつつあるのが現在の欧州経済の姿である。しかも、これはユーロ加盟国にとどまらない。つまり、欧州経済は信用収縮による景気悪化に見舞われているのである。

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