TPP、北朝鮮ミサイル危機、憲法改正問題---政府は公に語らないが、ここだけはおさえておくべき話
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 政府は口が裂けても言わないが、実は「この問題はここがキモ」という話はたくさんある。本来なら、メディアが問題のポイントを鋭く突いて広く議論を促すべきなのだが、どうも日本では政府や官僚、政治家が言わないと、メディアも積極的に書かない風潮がある。

 政府が公に語らない話をズバズバ書いて「もしも自分の理解がトンチンカンだったら大変だ」とビビッているような感じなのだ。つまり、あえてリスクをとりたくない。そこで今回は「政府は絶対に言わないけど、ここはおさえておくべきだ」という話をまとめて紹介しよう。

メディアが正面から書かないTPPの本質

 まず、環太平洋連携協定(TPP)だ。

 TPPについては「日本が自動車で米国に譲歩した」とか「米国にやられてしまう」といった話が相変わらず流れている。ところが、そういう見方は評価の基本軸がずれている。TPPは単に貿易自由化を目指す通商交渉ではない。米国を軸とした外交・安全防衛上の枠組みに参加する意味合いがあるのだ。

 TPP交渉に参加している国はいずれも自由と民主主義、市場経済、法の支配といった理念と価値観を共有している。だが、たとえば北朝鮮はそうではない。民主主義どころか貿易すら極めて限定的で、鎖国した独裁国家だ。他国と貿易を通じた相互依存関係にないから、ともに利益を享受する「ウィンウィン関係」には入りようがない。

 それどころか核ミサイルを振りかざし、日本や米国、韓国を脅して生き残りを図ろうとしている。こういう国に対処するために、米韓はいま日本海で合同軍事演習を展開中だ。日本もイージス艦を出して米韓と隊列を組んでいる。

 中国はどうか。こちらは市場経済に移行しつつはあるが、政府の関与はまだ非常に大きい。民主主義や法の支配もけっして十分ではない。日本とは尖閣諸島問題で険しく対立している。

 そういう中で、TPPはアジア太平洋地域の平和と繁栄に寄与する枠組みになる。言うまでもなく、地域の「平和と安定」は「繁栄」の前提だ。だから、TPPの損得勘定は繁栄=貿易自由化だけでなく、平和と安定=安保防衛という側面も視野に入れて考えなければならない。

 はっきり言えば、日本がTPPの枠組みに入って平和と安定の基礎が強化されるなら、貿易自由化で多少、譲歩したところでトータルでみれば収支が合うのだ。こういう議論を表立って言うと「日本は米国の属国になるのを認めるのか」といった感情的な反発が起きたりする。だから、メディアもなかなかずばりと書かない。

 だが、政府は実際、そのように計算している。安倍晋三首相はTPP事前交渉の日米合意を受けた関係閣僚会議で「TPPは日本経済やアジア太平洋地域の成長の取り込みといった経済的メリットに加え、同盟国の米国はじめ自由民主主義と法の支配といった普遍的価値を共有する国々とのルール作りであり、安全保障上の大きな意義がある」(朝日新聞、4月13日付)と語っているのだ。

 これは「政府がちゃんと言っているのに、メディアが正面から書かない」という話である。これとは別に、TPPには「政府が言わない」部分もある。

 それは「日本の改革を進めるためには、TPPという外圧を使うのが一番」という考え方だ。政府が「外圧を使って改革を進めよう」などと言い出すと、もちろん袋だたきに遭ってしまう。「改革を進めるのは政府の仕事なのに、外圧頼みなんて責任放棄だ」となるからだ。だから、政府は絶対に言わない。

以前のコラムでも書いたが、実は「外圧を使って国内の改革を進める」というのは、どの国でも当たり前にやっている手法である。既得権益をもつ抵抗勢力を押さえ込むために、国内の改革バトルで片付けばいいが、だいたい難しいので「他国との関係を深めるために、やむをえない」という形で外圧を使う。その結果、国全体としては他国とウィンウィン関係に入っていく。

 日本のメディアは、もっとはっきり「改革に外圧を使うのは普通の手法」と指摘すべきではないか。どの国もお互いさまなのだ。

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