『2030年 世界はこう変わる』(米国国家情報会議=編)
~序、まえがき、第1章より一部抜粋~

 本書を一読すれば明らかですが、2030年は今とはまったく違う世界になっています。1995年に国家としての繁栄期を終えた日本は「世界一の高齢者大国」として、経済は縮小の一途をたどることになります。つまり、日本は国家としてのグランドデザインを大きく変える必要があります。にもかかわらず、2012年の衆院選で、その点についてきちんと主張を行い、国民に議論を呼びかけた正統は皆無でした。それで良いのでしょうか?

 この国で生きていく私たちの子供や孫が将来より良い暮らしを送ることができるためにも、私たちはもっと真剣にこの国の未来について話し合う必要があるのではないでしょうか。

 本書が、そんな議論のための「叩き台」になれば幸いです。

本書を誤読する人と精読する人では大きな差がつくだろう---立花隆 

 これは一般大衆向けの読み物ではない。政府の政策文書でもない。アメリカの国家戦略の解説書でもない。アメリカの国家戦略を策定する者、ならびに、アメリカの国家戦略に関心を持つ者が基本的に頭に置いておくべき、近未来(15~20年後)の世界のトレンドが書かれている。

 米国国家情報会議は、このような中・長期予測のために作られた機関だ。前身(報告・評価室)は1947年に作られたCIAの内部部門だった(1979年に現行の組織に改組)。作成する報告は、第一義的にはアメリカ大統領のために作られる。

 大統領の一日は毎朝、CIA長官による国内・国際情勢のブリーフィングからはじまる。これを一日刻みの超短期レポートとすれば、その上に、週刻み、月刻み、年刻みの短期レポートがあり、その上にくる中・長期レポートが、この『グローバル・トレンド』になる。かつてこの報告は、大統領と閣僚、議会有力者などにしか公開されなかったが、いまは一般に公開されている(おそらく大統領には別バージョンのディープ版報告が渡っている)。

 この報告は、大統領選挙に合わせて、4年に一度新しくされる。新大統領は、当選したあと、就任式の前に、このレポートを渡され、世界情勢の変化に合わせてアメリカはどのような国家戦略を採るべきかを練ることになっている。

 アメリカでは中・長期の未来予測を必要とする人々は、官僚であろうと、企業人であろうと、学者であろうと、エリートたちは、皆このレポートから考えを出発させる。アメリカのエリートと肩を並べる思考をしようと思ったら、このレポートをしっかり読みこむことが必要だ。

『2030年 世界はこう変わる』
米国国家情報会議=編
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 読んでいくうえで留意すべきことは、読む前に全体の構造をしっかりつかむことだ。まえがき、目次は特にしっかり読む。各章の前書き的部分(ゴシック体)をまずしっかりまとめて読んでしまうといい。全体像が素早くつかめる。時間が極度にない大統領に読ませる文章は、すべて、そういうところにエッセンスを詰めこんである。あとは図面グラフをしっかり見れば(横軸縦軸の単位に注意)、だいたい内容がつかめるようになっている。

 未来予測は外れることが多いから、ちがう未来展開の可能性がたくさん書いてある。どういう条件下でどういう可能性があるかをしっかりつかまないと、誤読する可能性が大きい。第2章、第3章の「別の可能性」シナリオには特に注意が肝心。最悪のシナリオと最善のシナリオではまったくちがう世界が生まれる。日本は最悪のシナリオなら滅んだも同然だが、最善のシナリオならまだまだいける。

 本書を誤読して軽薄な知ったかぶり発言しかできない人と、精読して血肉化できる人では大きな差がつくだろう。