ドイツ
FCバイエルン・ミュンヘンのGMが脱税容疑で逮捕されていた!? 総選挙を控えたドイツで盛り上がる大型脱税問題について
バイエルン・ミュンヘンの試合観戦に向かうウリ・ヒョーネス氏 〔PHOTO〕gettyimages

 先週、世界のタックスヘイヴンの話を書いたが、今週のドイツでは、脱税のテーマが、思いがけないところから新たに大炸裂した。

 それは4月20日、ドイツの著名なニュース週刊誌『FOCUS』が、「ウリ・ヒョーネス(Uli Hoeneß)がスイスの銀行に隠し持つ預金を自己申告した」というニュースを流したことで始まった。ミュンヘンの検察が、すでに脱税の疑いでこの件の捜査に入っているという。

ドイツ人のスイス銀行預金額は推定1,750億ユーロ

 まず、ヒョーネスとは誰かというと、往年のサッカーの大スターで、現在はFCバイエルン・ミュンヘンのGMを務める大物。FCバイエルンといえば、ドイツ最強のサッカーチームだ。ドイツでは、サッカーの大物は大変な人気で、社会においてもかなりの影響力を行使する。

 だから、ヒョーネスもスポーツ番組だけではなく、テレビのトークショーのゲストとしてもお馴染みで、しばしば、金持ちの不正は許すまじというような、模範的な意見を力説してきた。イメージとしては、サクセス・ストリートを歩んできた理想的なスポーツマンといったところか。61歳。

 自己申告というのは、「税などの不正、あるいは不完全申告を、期限内に自分から修正する」ことだ。この規則は、元々、本当にうっかりと申告漏れをして、あとで気が付いた人が、間違いを修正できるように作られた。これをすれば、脱税の罪には問われない。

 自己申告は、普通は税務署が処理する。ところが、ヒョーネスの場合、検察が入って家宅捜査が行われた。何かおかしい。案の定、南ドイツ新聞が、彼が3月に逮捕されていたことをすっぱ抜いた。現在は、500万ユーロ(6億円)の保釈金を積んだので、一時釈放されているだけだという。つまり、再逮捕もあり得る。

 ドイツ人がスイスに預金している金額の推定は1,750億ユーロ(21兆円)で、そのうち少なくとも1,000億ユーロ(12兆円)が非課税、つまりヤミの金だと言われている。スイスは、EUの圧力にもめげず秘密主義に徹しているので、ドイツの税務署としては、この犯罪を取り締まる方法がない。

 最近はしばしば、スイスのいろいろな銀行から、預金者データのCDが流出している。これは、銀行の内部の誰かが盗み出したデータで、それをドイツの州、あるいは税務署が買い取り、脱税者の追跡に利用する。しかし、たいていは摘発しなくても、「こういうCDを入手したぞ」と発表するだけで、"うっかり申告漏れをしていた"人々が、雪崩を打ったように自己申告する。

 つまり、CDの値段は高いが、その分、実入りも大きい。『ディ・ツァイト』誌によると、2010年以後だけでも、こうして4万7000人の人が、20億ユーロ(2,400億円)を支払ったという。現在の野党であるSPD(ドイツ社民党)が政権を持っている州などは、CD購入には非常に積極的だ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら