「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第1回】 ~グローバル経済の構造変化~

4月11日の株価指数 〔PHOTO〕gettyimages

 今回から、「講座: ビジネスに役立つ世界経済」と題して、海外経済の経済情勢を読者の方々にわかりやすく伝えていきたいと考えている。

 筆者が勤務する証券会社では、アベノミスクスの効果からか、日本株に対する個人投資家の需要が急増している。だが、これまでの日本株式市場の長期低迷、及び、何度もデフレ脱却のチャンスがありながら政府に裏切られてきた経緯から、日本株への投資を控える投資家も少なくない。このような投資家は、このところの円安から、外債や外国投信への投資意欲を強めている。

 ここで注意すべきは、世界経済に、もはやリーマンショック以前のような新興経済圏を中心とした高成長を期待できない点にあると考える。だが、日本の投資家は、依然として新興経済圏の高成長(特に、中国経済の復活)に大きな期待を抱いているように思える。

 筆者の個人的見解では、この認識は適切ではないと考える。そこで、第1回は、グローバル経済の構造変化を概観したいと思う。

世界経済の鍵は米国経済が握る

 筆者は、2009年5月に『恐慌脱出---危機克服は歴史に学べ』(東洋経済新報社)を上梓した。光栄にも、同書で筆者は、「第1回政策分析ネットワーク シンクタンク賞」をいただいた。

 同書は、リーマンショック直後に執筆したものだが、当時、日本の経済学者やエコノミストの大半は、アメリカの没落と中国の台頭(及び、新たな覇権「国」としてのユーロ圏の台頭も)を予想していた。筆者は敢えて、それに反対し、同書でアメリカの復活と中国、ユーロの経済危機を予想する論説を展開した。

 なお、「政策分析ネットワーク シンクタンク賞」の講評においては、筆者の中国経済の悲観的な見方に対する疑問が指摘されていた点を付記しておこう。

 ところで、同書の出版から既に4年が経過しようとしているが、筆者の世界経済に対する考え方は当時とほとんど変わっていない。すなわち、今後も、米国の経済覇権は変わらず、世界経済の鍵は米国経済が握る展開がむしろ強まると考えている。

 特に、筆者は現在の米国経済が、95年から始まるITブーム前夜の状況に類似しているのではないかと考えている。

 1980年代末~1990年代前半の米国も、S&L危機という不動産危機から金融危機への連鎖の中、米国の中央銀行であるFRBは大胆な金融緩和を実施し、米国経済崩壊の危機を回避した。当時も金融緩和が実体経済へ波及するまでには長い期間を要した。そして、ようやく94年頃に回復の芽が徐々に表れ始めた。

 そして、特筆すべきは、米国企業が、この経済危機からの復活の背後でIT(情報技術)を駆使した新たなビジネスモデルを構築しつつあった点であった。このITが米国の潜在的な経済成長率を押し上げたか否かについては経済学界で評価が分かれるものの、95年から2000年にかけてのITブームによって、米国経済は見事な復活を遂げたのは紛れもない事実であろう。

 今回もシェールガス、ビッグデータ、新たな都市化の動きなど、米国経済では、様々な次世代イノベーションの芽が出始めている。このようなイノベーションが開花すれば、やはり、米国が世界経済の覇権を握るという構造に変わりはないのではなかろうか(もっとも、最近の「シェールガス革命」に関する日本の報道は過熱気味でその内容を精査する必要はあると思うが)。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら