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国民的大論争 第6弾 出生前の「遺伝子検査」高齢出産に新たな「リスク」 35歳以上は要注意

 負担の少ない新型出生前検査の登場は、高齢妊婦にとってはよい知らせだったのかもしれない。だが、この検査の対象となった時点で、その妊娠は「ハイリスク」であるということを忘れてはならない。

胎児の異常が分かる

「当院では、やってくる妊婦の半数以上が35歳以上で、そのうち3割程度は40歳以上。日本全体でも、いま妊婦の4人に1人が高齢妊娠です。

 もし妊婦が、高齢妊娠であることを理由に胎児の染色体異常を心配していて、『出生前診断を受けたい』と申し出てきたら、私は新型出生前検査も選択肢として提示しなければならないと思います。

 胎児に異常がないか不安で、妊娠や不妊治療をためらったり、妊娠した後も悩み続けたりする35歳以上の女性は少なくない。その中には、今回の新型出生前検査の導入を聞いて『妊娠は諦めていたけれど、頑張ってみようかな』と相談に来る方もいるんですよ」

 こう語るのは、新型出生前検査を今月から開始した昭和大学病院の、関沢明彦准教授だ。関沢氏の話からは、女性たち、とりわけ妊娠すれば高齢妊娠となる35歳以上の女性たちが、妊婦の血液検査だけで胎児の染色体異常が高精度で分かるという、新型出生前検査の登場を歓迎している様子が伝わってくる。

 41歳になった現在も不妊治療を続ける、都内在住のA子さんも「今後妊娠に成功したら、新型検査をぜひ受けようと思う」と話す。

「38歳以降、これまで人工授精と体外受精を計10回以上行い、3回妊娠しましたが、すべて流産しました。

 でも、もし子どもができたら、出生前診断は受けようと思います。年齢を考えると子育てが気がかりなことや、両親から受けろと言われているせいもあります。でも、やはり一番の目的は、たとえ障害のある子が生まれるとしても、きちんと準備をしたうえで受け入れてあげたいからなんです」

 日本産科婦人科学会が定めた新型検査のガイドラインには、対象は基本的に「高齢妊娠の者」—年齢は明記されていないものの、35歳がその区切りとなる—と書かれている。晩婚化に歯止めがかからない現在、高齢妊娠が今後も増え続けることは確実とみられる。一方、新型検査を実施できる医療施設は4月中旬時点で全国15ヵ所。いまでさえ決して多いとはいえないこれらの施設に、それぞれ数百人単位で希望者が殺到し、順番待ちになっているところもあるという。もはや当たり前の存在となった高齢妊婦たちのニーズで、早くもパンク状態なのだ。

 だが、胎児の異常が簡単に分かるようになったからといって、高齢出産のリスクそのものが小さくなったわけでは決してない。むしろ、分かることが増えたことによって、新しいリスクも生まれているのである。

 州によって差はあるが、6~8割の妊婦が出生前診断を受けるアメリカでは、35歳以上の妊婦は「ハイリスク妊婦」と呼ばれる。出生前診断の受診を推奨されるなど、35歳より下の「ローリスク妊婦」とは産婦人科医の診療対応が変わるほか、両者を区別した統計もとられている。