特別読み物 宮本洋二郎
広島カープ「最後のスカウト」
伸びる選手はこう見抜く

週刊現代 プロフィール

 その時、次の投手に一言二言声かけているんです。内野手にも、チームメイトみんなに。これが大事なんです。

 伸びる子っていうのは、コミュニケーション能力が高い。同級生も上も下も、監督も関係なく、アイツは練習中も試合中も変わらず、分け隔てなく接していた。

 そう語るのは、2月に定年を迎え、24年に及ぶスカウト生活に終止符を打った宮本洋二郎氏(71歳)だ。米子東のエースとしてセンバツ準優勝に輝き、早大を経て巨人、広島、南海で活躍。引退後は、南海で野村克也監督の下、投手コーチを務めた後、広島に移りスコアラー、スカウト、コーチなどを歴任。'93年から再び関西担当スカウトとなり、前田健太、倉義和らの獲得に尽力し、今季のドラフト1位ルーキー、高橋大樹も宮本氏が担当した。「広島に宮本あり」と言われた伝説のスカウトが、その極意を明かした。

 さっきも言ったけど、僕は惚れたら毎日でも見に行く。これは口説くためだけではないよ。選手の変化を見逃さないためでもある。

 誰よりも早くグラウンドに来て、選手が出てくるのを待つんです。それから監督やコーチに挨拶をして、練習を最後まで見てね。選手がクールダウンをし終えるころに、「また明日もお伺いします」と言って帰る。

 マエケンは最初の頃、僕の顔を見ても「どこのおっさんかな」という感じでね。でも2週間くらいしてからかな、ニコッとしてくれるようになった。「こんにちはー!」と言うてくれ出した。

 嬉しかったよ。でも僕ら、選手とは直接お話しできん決まりになっているから、心の中で「頑張れよ」と答えていました。

 昔とは子供の性質も変わってるんやろうけど、最近の子は人がいい。でも特別伸びる子は、技術は当然ある上で、思いやりもあって周囲に気が遣える。

 もちろん、ニコニコしているだけじゃない。

 周りとの関係がいいってことは、相手の話を聞ける、かつ認められている証拠です。それは、ほどよく自己主張できるからでもある。

 そしてマエケンは、思いやりや感謝を、自らの成長にもつなげられるんです。僕が辞めると聞いてアイツ、

「宮本さんが、これから先、胸を張って歩けるように僕は頑張りたいです」

 て言うてくれたらしい。そんなこと考えてくれるなら、そら伸びるわ。

 当時は、ええ投手になるとは思ってたけど、沢村賞も最多勝もとるような選手になるとは思ってなかった。アイツが成長していく度に、「技術だけじゃなくて、プラスアルファをよく見なさい」と、教えてもらっている気がしたものです。