官々愕々
北朝鮮を見誤る米日

北朝鮮の核実験に関する韓国のニュース(PHOTO:gettyimages)

 北朝鮮はいつミサイルを発射するのか。誰にもわからないが、実は、それはあまり重要なことではない。

「金正恩は世界の常識を理解しない人間だから、彼の行動は合理的に予測できない。それが最大のリスクだ」という論評をよく聞く。その前提となっている世界の「常識」とは何か。平たく言えば、「国際社会を仕切るのは、基本的には戦勝国であり国連安保理における拒否権を持つ5大国(米、ロ、中、英、仏)である。5大国以外は核保有は許されず、それに反する行動をとる国は国際法違反のならず者である。

 ならず者には国際社会が一致して制裁を与えることにより、その国を矯正して国際秩序を守らなければならない」というものだ。この「常識」に挑戦するものは最終的には抹殺されても仕方ない。イラクのフセイン政権がその例だ。

 一方、少しだけ想像力を働かせて金正恩の思考を推測してみると別の論理が見えてくる。「北朝鮮も米国も平等に主権国家である。アメリカが核を持つ権利を有し、北朝鮮にその権利がないのは不公平だ。米国は、何の根拠もなくイラクのフセイン政権を倒した。いつ北朝鮮を攻撃してくるかわからないならず者だ。ならず者に対する正当防衛の手段として核を持つのは当然の権利だ。インド、パキスタン、イスラエルも持っている。北朝鮮に核放棄を求めるなら米国も核を放棄せよ」というのが金正恩の理屈だ。

 さらに、金正恩は欧州で教育を受けて世界情勢を知っている。「このままでは北朝鮮経済は早晩行き詰まり、最後は政権の崩壊につながる。自分にとっては死を意味する。しかし、米国に対抗して通常戦力整備に際限ない資源を投入している現状では、経済成長の実現は不可能だ。何とかして米国と対等な立場に立ち、米朝平和協定を結んで安定した環境下で経済改革にまい進したい。どうせ死ぬなら、最後に局面打開のために命がけの賭けに出てみよう」と考えているのではないか。

 以上が金正恩の考え方であると仮定すると、現在の北朝鮮の行動は、非常に理にかなっている。ミサイル発射も核実験もブラフではない。米国が譲歩しない限り、核実験とミサイル発射を繰り返し、最後には小型核弾頭と長距離ミサイルの開発を終了、さらに、それをイランに売却するというカードをちらつかせるだろう。米国は否が応でも北朝鮮を事実上核保有国と認めざるをえなくなる。