雑誌 ドクターZ
就活「後ろ倒し」で何が変わるのか
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 就職活動の開始時期を現在の3年生の12月から4年生の4月に「後ろ倒し」するよう、政府が経済界に要請すると報道されている。就活の早期化については、大学側から「学業がおろそかになる」との声も上がっていたが、果たして、就活を「後ろ倒し」にすることはどのような意味を持つのだろうか。

 以前には、就職協定があった。1953年に文部省(現・文部科学省)主催の「就職問題懇談会」で学生の推薦開始日を申し合わせたのが始まりだが、1997年に廃止された。それ以降、3年生からの就職活動が一般化してきた。

 就職協定や、今回政府が経済界に要請する申し合わせは、誰の利益になるのだろうか。経済学的な視点から見れば、企業である。企業と学生の接触が自由であれば、学生のほうに選択の自由が広がるからだ。

 これは、プロ野球のドラフト制度を考えればわかる。ドラフトも、プロ野球球団側が一斉に交渉することで、選手の自由度を狭める。契約金などの高騰を抑えるための球団による一種のカルテルともいえ、ドラフトは、選手の職業選択の自由を制限し、選手獲得市場における買い手の独占を図るという理由で、独禁法違反であるとの見解もある。実際、アメリカのプロフットボールリーグ=NFLでは、ドラフト制度がアメリカの独占禁止法にあたる反トラスト法に違反する、とされたこともある。

 もっとも、プロ野球のドラフト制度に関しては、そう目くじらを立てることもあるまい。プロ野球全体が一つの会社で、各球団はその中の部署に過ぎないと考えれば、ドラフトは配属部署を決めるようなモノで、独禁法違反ではないともいえるからだ。

 いずれにしても、今回のような学生の権利侵害に関わる重要なことを、本来学生を保護すべき大学側から要望する声が出ているとは実に情けない。

 大学の先生は、学生が就活に精を出して自分の講義に出席しないのを問題視しているのだろう。しかし、よく考えれば、学生が授業に出ずに遊んだり、アルバイトに忙しいのは昔からの話。なぜかというと、理由は明白で、授業がつまらないか、または授業を聞かないでも単位が取れるからだ。たまたま今は就活を口実にして授業をサボっているだけで、大学側がしっかりとした教育をしないと、学生の「学業怠慢」は今も昔も解決できない問題として残るのである。