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特別レポート トヨタ、パナソニック、ソニー、みずほ、三井住友ほか
ニッポンの一流企業「異例の人事」を読み解く

 人事を見れば、企業がわかる。今年も一流企業で「異例」人事が盛り沢山。抜擢、栄退、慣例破壊。そこに秘められたトップのメッセージとは。企業の内情を知り尽くす4人が匿名座談会で読み解いた。

子会社からの「返り咲き」

経済部 今年も各社の幹部人事が出揃ったけど、「異例」の人事が目立ったね。特にうちが注目したのがみずほ。みずほフィナンシャルグループ(FG)と、その傘下のみずほ銀行、みずほコーポレート銀行の副社長、副頭取クラスが軒並み退任させられる人事が断行された。

デスク 特に驚いたのが、西澤順一・みずほFG副社長と中野武夫・みずほ銀行副頭取が外されたこと。次期社長・頭取候補に名前が挙がったことのある人たちだからね。

専門誌 ほかにも'70年代後半に入社した世代の大半は退くことになった。一方で、その後釜には若い世代の実力者が登用されている。みずほFGの副社長になるのは'80年入社組がほとんどで、辻田泰徳・みずほFG常務執行役員にいたっては'81年入社だからね。

経済部 社風が官僚主義と言われてきただけに、大規模な新旧交代と、掛け値なしの実力主義人事を徹底した今回の人事の異例ぶりが際立つってわけだ。

アナリスト しかも、これまでは、旧三行(日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行)の出身者をそれぞれ同じ数だけ幹部に入れるというバランス人事が続いていて、過去のトップはOBに気を遣ってこの不文律を破れなかった。これが、今回は崩された。こんな人事をやりのけた佐藤康博・みずほFG社長には、並々ならぬ意欲を感じる。

専門誌 実は佐藤社長は「旧三行によるたすき掛け人事をやめる」と言って、昨年4月から、外部の人事コンサルティング会社を入れて、人材の洗い出しをやっていた。その結果を見たら、なんでこんなやつが幹部にいるんだというのが一目瞭然でわかったらしい。

アナリスト とはいえ、アホが幹部にいたのはこれまでも「暗黙の了解」だった(笑)。それでも旧行バランスを崩そうとすると、"紙爆弾"が飛び交うほど反発にあって、切れないというケースが多かった。

経済部 だから、今回は社外取締役と佐藤社長だけで、常務以上の人事を決めていったんだよ。それで情報が外部に漏れなかったから、事前に潰されずに済んだ。そのあたりが抜かりないというか、佐藤社長の本気度の表れだね。

デスク みずほは今年2月に中期計画を作り、この4月がその計画のスタートラインになる。計画の目標には「アジア地域でナンバーワン」など意欲的なものが掲げられているけど、佐藤社長はなにがなんでもやり遂げようとしている。旧行意識や過去の成功体験を引きずっていてはとてもじゃないけど、できない。人事で大鉈をふるって、社員に「オレは本気だ」というメッセージを送ったんだろう。今後が見ものだ。

専門誌 同じ銀行業界では、三井住友も異例の人事をやってのけた。

デスク そうそう。消費者金融のSMBCコンシューマーファイナンス(旧プロミス)の久保健社長を、三井住友銀行に引き戻して、副頭取に抜擢した。久保さんは'07年に三井住友銀行の執行役員から、プロミスの副社長に転じていたから、完全に引き戻した形。この人事は異例中の異例で、業界は騒然となっているよ。

経済部 銀行業界では、幹部クラスが子会社や関連会社に出たら、片道切符で戻って来られないというルールがあった。それが副頭取という大幹部として本体に戻ってくるというんだから、こんな人事は史上初と言っていい。

アナリスト 久保さんはアジアでの消費者金融事業を拡大させた立て役者。三井住友はいま、消費者金融を中心にアジア市場を攻略しようとしているし、国内でもリテール(小口金融)分野を伸ばそうとしているから、実績を買って、「リテールの久保」に白羽の矢を立てたということでしょ。

専門誌 目下のアベノミクスによって金融界には追い風が吹いている。三井住友フィナンシャルグループの宮田孝一社長と三井住友銀行の國部毅頭取は「慎重派」の経営者と言われてきたけど、過去の慣例を無視した人事を断行してでも、この波にいち早く乗って果実を得たいと思っているのだろう。旧態依然とした経営体質が続いていた銀行業界に、風穴を開けるきっかけとなる人事となればいいけど。

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