財政再建から「成長」に軸を移したG20とラインハート・ロゴフ論文の誤りについて
〔PHOTO〕gettyimages

 G20(20ヵ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)が18~19日にワシントンで開催された。

 当然のことながら、日本の金融緩和はデフレ脱却のためであって円安誘導ではないと、G20にも認められている。他の先進国がやってきたことを日本が遅れて実行したからといって、非難されるはずはないが、これまでの日銀の無策にあきれるとともに、これでやっと世界標準になったと少し安堵する。

 ただ、財政面では「日本に財政再建要求」(時事)との報道もある。たしかに、日本に対し「信頼に足る中期財政計画を策定すべきである」とG20声明に書かれている。ただし、アメリカも同様に「バランスのとれた中期的な財政健全化計画に向けた更なる進展が必要である」と書かれ、先進国全体に対して「中期的な財政戦略をサンクトペテルブルグ・サミットまでに策定する」とされているのだ。

 しかし今回のG20は、事前にいわれていた財政再建への取組みから、かなり後退したようだ。はっきりいえば、財政再建よりも「成長」に軸を移したといえる。声明の冒頭には、「我々は成長を引き上げ、雇用を創出する決意を再確認した」と書かれている。つまり成長が優先なのだ。

ラインハート・ロゴフ論文の「90%」

 13日付けロイターでは、G20で「各国の公的債務を、長期的にGDP(国内総生産)の90%をはるかに下回る水準に削減する案について協議することが分かった」と報じている。ロイターが入手した準備資料はEU(欧州連合)代表のために用意され、EU財務相が13日に承認したものだという。

 この90%という数字は、欧州委員会のレーン委員(経済・通貨問題担当)が「債務の対GDP比率が90%を超えれば成長減速に見舞われる」といっていたものだ。

 その根拠とされているのが、ハーバード大学のカーメン・ラインハート教授とケネス・ロゴフ教授が2010年に発表した公的債務に関する研究論文だ。

●"Growth in a Time of Debt"  NBER Working Paper No.15639, January 2010

 ラインハート・ロゴフ論文は、公的債務残高が対GDP比で90%を超えている国家の平均実質成長率はマイナス0.1%だとしている。そしてこの「90%」という数字が、一人歩きして、ここ数年、緊縮策をめぐる議論で影響力を発揮してきた。

 ところが、15日、マサチューセッツ大学の研究者が、ラインハート・ロゴフ論文について、「誤りがある」と批判した。論文もデータも以下のサイトにある。

●"Does High Public Debt Consistently Stifle Economic Growth? A Critique of Reinhart and Rogoff" Political Economy Research Institute, 4/15/2013

 この反論は絶妙のタイミングだった。18日に始まるのG20の直前であったため、すぐに話題となって、結局、EUから出されるはずだった「債務残高対GDP比を90%以下に抑える」という提案は表だって議論されなかった。

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