「息子と僕のアスペルガー物語」 ライフ
奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第25回】
素晴らしい先生と出会い、初めての友達ができた

【第24回】はこちらをご覧ください。

「頭の骨が折れたかもしれない」と叫び、倒れる

 「頭が痛いよ! 痛くてたまらないよお!」

 息子がこんな叫び声を上げながら家に戻ってきたのは、春休みも終わり近くを迎えた4月初旬の夕方のことだった。

 その日、僕は前月から連日のように続く激務で体調がおかしくなり、職場を早退させてもらって、家のソファでうとうとと寝ていた。そこへ息子の大声が聞こえてきたのだから、びっくりしたのも無理はない。すぐに飛び起きて玄関に駆けつけた。

 「おい、どうしたんだ? 大丈夫か?」

 息子はかろうじて靴を脱ぎ、家に上がったところだった。顔色は真っ青、じっと立っていることができない様子で、ふらふらと身体を揺らしている。驚いている僕に、息子は言った。

 「道を歩いていたら、自転車が前から突然、猛烈な勢いで僕の方に突っ込んできて、轢かれそうになったんだ。避けようとしてパッと飛びのいたら、塀の角に、頭を凄い勢いでぶつけちゃったんだよ」

 「何だって? そんなに強くぶつけたのか?」

 「そうだよ。今まであんなにひどく頭を打ったことはないよ。気持ちが悪い。頭の骨が折れたかもしれないよぅ」

 息子は涙ぐみながら訴えると、頭を抱えたまま玄関口で倒れ込んでしまった。

 「お、おいっ・・・」

 僕は、愛する息子のただならぬ様子を目の当たりにして、パニックに陥った。身体は硬直し、口がガクガク震えるばかりで、「どのくらい痛いんだ?」と言葉を続けることもできなかった。

 ASD(自閉症スペクトラム障害)を抱える僕は、ただでさえ突発的な出来事に対応するのが非常に苦手だ。それがこのときは、「いつも元気な息子が、帰宅した途端『頭を強くぶつけた』『頭痛がする』『頭の骨が折れた』などと叫んだ挙げ句、目の前でバタリと倒れた」のである。冷静に対応できるはずがなかった。

 心の中が真っ白になり、頭から出た大量の汗が頬や首筋を伝っていくのがわかった。両手はブルブルと震えて止まらない。