[陸上]
白戸太朗「マラソンはお金がかかる!?」

 アベノミクスで景気が向上しているらしいが、スポーツイベント業界は苦戦が続いている。それは、私が関与することが多いマラソンイベントも同様だ。飛躍的に増えた愛好者人口とは裏腹に、各地のイベントは存続をかけて戦っている。

 東北以北では、もっとも大規模な8月の北海道マラソン。毎年1万5000人を集め、札幌市内を駆け抜けるこの大会も27回目を迎える。今年も募集開始早々定員に達し、上々のスタートに見えたが……。地元関係者の間で聞かれる話題は「大変だ」とか「苦戦しているらしい」というような暗い言葉ばかりで、明るい話題をあまり聞くことができていない。

エントリー料だけでは賄い切れない

 この大会、近年は道内有力企業が冠協賛になるなど順調な運営に見えたが、今年は中心となる協賛企業がまだ決まっていないという。それでもエントリーフィーは1万円で、フルマラソンの定員1万2000人の合計は1億2000万円だ。それに加えて定員3000人のファンランナーのエントリーフィーは5000円で1500万円となる。つまり、エントリーフィーだけで1億3500万円を集められることになる。さらに地元で応援してくれている協賛企業もある。だが、それでも運営費を賄いきれていないというのが現状なのだ。

「公道使用スポーツはお金がかかる」。これが現在の日本国内イベントにおける定説であり、イベント関係者を苦しめている。何がそんなにかかるのかというと、一番は交通規制に関わる警備関連のコストだ。最近、発表されたデータでは京都マラソンでは警備員だけで3600人、スタッフ総勢で1万5000人を要したという。通常、警備会社に仕事を発注した際の相場は1人あたり2~3万円。最安値の会社に依頼したとしても、京都マラソンでは警備員だけで8000万円近い費用がかかっている計算になる。また、スタッフの大部分がボランティアだとしても、この人数をコントロールするスタッフ数もそれなりにいることを考えると、その人件費たるや半端なものではない。実際、京都マラソンの開催費用は6億円以上にまで膨らんだという。

 これは警察の公道許可条件に警備強化要請が強くなっていることが要因のひとつとしてあげられる。参加者の安全を確保し、一般交通とのトラブル回避のために必要だという判断は、警察としては当然のことであろう。安全なくして、イベントの成功はない。しかし、公道イベントが増えた現在では、以前のように警察にすべてお願いすることが難しくなっている。東京マラソンも、初回は5000人の警察官が配備されたというが、それだけの警察官が駆り出されるとなると、通常業務に支障が出ないとも限らない。そのため、警察官の数を最小限にし、その不足分を警備員で補充することが運営側に求められる。警備も有料の民間企業を使うことで、近年の公道イベントは費用がかさむ結果となっているのだ。

 東京マラソンを皮切りに増えた国内都市型の市民マラソンでも、ほとんどの大会が苦戦を強いられている。安泰なのは東京マラソンくらいで、あとはどこも予断を許さないのが現状である。ちなみに、東京マラソンでは開催費用が約20億円かかる。参加者は3万5000人、単純に計算すると1人当たり5万4000円程度かかっていることになる。前出の京都は6億5千万円。参加者は1万4000人なので、1人当たり4万7000円だ。ところが、1人当たりのエントリーフィーは東京1万円、京都1万2000円(今年から2000円UP)。それだけでは全く運営できないことは一目瞭然で、運営に苦戦するのも当然なのだ。