北朝鮮問題の権威ビクター・チャー氏の講演概要 ~「ジョージタウン大学日米リーダーシッププログラム(GULP)」に参加して

 筆者は現在、米ワシントンに来ている。ボストンでの爆弾テロ事件がテレビなどのニュースで大きく取り上げられている中で4月16日夜、北朝鮮問題の権威であるビクター・チャー氏の講演を聞く機会があった。

 講演では聴講者と質疑応答のセッションもあった。北朝鮮情勢は今後どのような展開を見せるのかについては不透明感があるが、アジアの安全保障上、非常に大きなテーマである。さらに日本は拉致問題も抱えている。チャー氏の発言の概要を本コラムで紹介する。

ソウルと東京の関係改善が優先的な課題

ビクター・チャー氏

 現在、ワシントンにあるジョージダウン大学教授で同大アジア研究プログラムディレクターでもあるチャー氏は、ブッシュ政権時代の2004年から2007年まで国家安全保障会議(NSC)アジア部長や「6ヵ国協議」米次席代表を歴任、北朝鮮問題については今でも米国メディアに引っ張りだこの、米国きっての半島情勢の専門家である。

 「竹島問題を契機に日本と韓国はいま『冷戦状態』で、最悪の関係にある。米国にとって同盟国であるこの2国の関係がうまくいっていなければ、米国も北朝鮮問題への対応では難しい立場に陥る。ソウルと東京の関係改善が優先的な課題であり、現実的な課題に対処する環境づくりが大切」

 チャー氏はまず、このように切り出し、北朝鮮問題に適切に対応するためには日本と韓国の緊密な連携が必要との考えを示した。

 さらに、「日本、韓国ともに政権交代した。安倍首相と朴大統領を共に知っているが、2人とも個人的には良い関係だと聞いている。とこの国にも歴史問題はあり、解決できないことも多くある。これは夫婦の問題と同じでお互いが受け入れ合って、問題を問題として表面化させずに流して進めることも肝要」と語った。

 そして、直近の情勢については「北朝鮮は次の3つを求めている」と説明した。

 一つ目は、核兵器とミサイルの保有を国際社会に認めさせること。これは交渉材料ではなく、北朝鮮はこうした武器をどんな状況でも手放さないということだという。

 次に、核保有国として国際コミュニケーションの中に入ること。「北朝鮮は米国と安全保障協定を締結したいし、食糧もエネルギーも欲しい。しかし、食糧・エネルギーを与えて協定を結んだからといって北朝鮮は武器を手放すわけではない」とも強調した。

 かつて交渉担当者だった際のエピソードも紹介した。コーヒータイムの非公式の場で北朝鮮側から「北朝鮮の非核化はあきらめた方がいい」と言われたので、「冷戦時のソ連や、パキスタンと同じように扱って欲しいのですか」と聞き返すと、先方の担当者は「そのように扱ってもらいたい。インドみたいに扱って欲しい」と答えたという。

 最後が、金一族の権力維持。つまり、現体制を維持して国家としての生き残りを目指しているというのだ。

 そして、「ミサイルの発射を今後数週間以内に行う可能性もあり、私は北朝鮮情勢が解決の方向に向かうとは考えていない。だからこそ、この脅威に対応するために、日韓が親密な関係を築き、同盟国である米国を加えた3国が一枚岩にならなければならない」とも語った。

 さらに「安倍首相は3月に訪米してオバマ大統領と話し合った。朴大統領も5月に訪米する予定だ。3者に強い信頼関係ができて、北朝鮮の脅威に現実路線で対応できる体制に戻ると思っている」との見方も示した。

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