読書人の雑誌『本』
『日本の景気は賃金が決める』著:吉本佳生
消費者物価指数の秘密

 二〇一三年に入って、一月には日本銀行が「年二%のインフレ目標」を設定し、三月にはその目標達成時期について「二年を念頭に」と答えた黒田新総裁が、日本銀行を率いるようになりました。

 インフレ=物価上昇の程度を測る指標にはいろいろありますが、そのうちの〝消費者物価指数〟の上昇率を年二%程度のプラスに引き上げるという目標を掲げて、実際にそれを達成するまで日本銀行がおカネをどんどん供給するかたちの金融政策は、安倍政権の目玉政策です。

 他方で、個々の企業のビジネスでは「ビッグデータ」という言葉が流行しています。情報技術の進歩によって、顧客情報などの膨大なデータが集まることを表現する言葉です。ビッグデータをいかに分析するかが、今後のビジネスではとても大切だといわれます。

 こうしてデータ読解の重要性が強調されるようになったのに、インフレ目標政策が本当に成功するかどうかについて、消費者物価指数のデータを細かく分析して論じる人が少ないことが、筆者にはとても不思議でした。そもそも、なぜ「年二%」なのでしょうか。

 ふつうの組織がこうした数値目標を設定するときには、「思い切りがんばったとして、○○部門では三%増、××部門では一%減、△△部門では五%増、◇◇部門では現状維持が精いっぱいだから、全体で年二%増は可能なはず」といった感じで、細かな数字を積み上げてみて、目標となる数値を決めるはずです。そして、目標設定したあとは、細かく進捗状況をチェックするはずです。

 消費者物価指数もまた、膨大なデータから計算されています。だから、過去のデータを細かく分析して、それを背景知識として「年二%のインフレ目標は本当に二年程度で達成できるのか?」を議論すべきでしょう。実際に大量のデータを調べたうえで安倍政権の経済政策---アベノミクスについて論じたのが、四月に講談社現代新書として出させていただいた拙著『日本の景気は賃金が決める』です。

 じつは、消費者物価指数のデータを細かく分析すると、ある条件さえ満たされるなら、年二%のインフレ目標は意外に早く達成できそうだとわかります。じつは、「地価」さえ上がればいいのです。

 
◆ 内容紹介
いま必要なのは、正社員の賃上げよりも、ハケン・バイト・パートの時給アップだ!アベノミクスの成否を分けるポイントとは?生活ダメージを抑えてインフレ目標を達成する方法とは?「景気刺激策としての賃金格差是正」、「都市部の不動産バブルを受け皿に!」、「人口の都市部集中こそ最高の成長戦略」・・・。豊富なデータをもとに、日本の景気を回復するためにほんとうに必要な「三本の矢」を、人気エコノミストが説く。