読書人の雑誌『本』より
2013年04月18日(木)

特別対談 畑村洋太郎×加藤陽子
「福島原発事故から何を学ぶか」

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イメージと現実のギャップ

加藤: 畑村先生は福島第一原発事故の政府事故調の委員長をおつとめになって、分厚い報告書もお書きになられています。

 今回の新著『福島原発事故はなぜ起こったか―政府事故調核心解説』(畑村洋太郎・安部誠治・淵上正朗=共著)では、先生をはじめとする事故調のメンバーがその報告書をふまえて、あのとき事故現場で何があったのか、東電・政府・地元自治体の対応はどうだったのか、今後どうすればよいのかをわかりやすく語ってらっしゃって、とてもおもしろく拝読しました。原発事故の技術的な側面についても嚙み砕いて解説されていますし、かなり大胆な提言もなさっていますね。

畑村洋太郎(はたむら・ようたろう) 1941年生まれ。東京大学名誉教授、工学院大学教授。専門は創造学、失敗学、危険学。東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会・元委員長。主な著書に『失敗学のすすめ』『直観でわかる数学』『未曾有と想定外』などがある。

畑村: 政府事故調で調べることができたのは「事故から一週間」だけなんですよ。でも、あれから二年が経つわけだから、除染の問題から避難によって多くの人が亡くなった実態まで、今きちんと言わなければいけないと思ったことは全部書きました。

加藤: 読みながらつくづく痛感したのは、私たちが抱いているあの事故のイメージと、現実に起きたこととの間には、実は大きなギャップがあるということです。

 たとえば、一般的には「全電源喪失」が事故の最も大きな原因だったと思われています。だから、再稼働をめぐる議論でも「電源」をどう確保するかが焦点になっている。でも、どれだけ電源があっても、「配電盤」がやられてしまったらどうしようもないと指摘されています。配電盤は地下一階にあったので、津波で水没して機能を失っていた。つまり、仮に電源が生きていても、事故当初の状況はあまり変わりなかった、と。

 つい先日(三月十八日)、福島原発で停電が起こり、使用済み核燃料プールの冷却が長時間停止する事故がありましたが、その原因は仮設の配電盤にネズミが入り込んでショートしてしまったことでした。先生がおっしゃっていたのはこういうことだったんですね。

『福島原発事故はなぜ起こったか 政府事故調核心解説』
著者:畑村洋太郎・安部 誠治・淵上 正朗
講談社 / 定価1365円(税込)
 
◆ 内容紹介
被害を拡大させた政府・東電・自治体の判断の誤りとは?メディアの誤解とは何か?いまなお続く避難・除染の本当の悲劇とは?

畑村委員長はじめ、政府事故調の中心メンバーだった3人の著者が、膨大な調査報告書をベースに、報告書に書けなかった独自の視点も入れ、事故の核心に迫る!!原発再稼働、進まない除染の問題にも一石を投じる決定版!
 
 
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