古賀茂明「返還計画」ではなかった「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」
「古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン」vol055 日本再生のためにより
【「古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン」vol055 目次】
―第1部― 日本再生のために
 ■1.「返還計画」ではなかった「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」
 ■2.福島第一原発で相次ぐおかしな「事象」と経産省、規制委員会の責任
 ■3.北朝鮮問題――パラダイム転換を迫られる国際社会の「常識」
―第2部― 読者との対話
―第3部― 古賀さんの日程
―第4部― メルマガ動画版の書き起こし(動画版第1回 2013年1月25日配信分)

1.「返還計画」ではなかった「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」

また官僚によるマスコミ操作が繰り返された

 4月5日に日米政府が共同発表した「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」は、報道されるような「基地の返還計画」ではなかったという話をしよう。

 この発表について記者会見した安倍総理は、「目に見える形で沖縄の負担が軽減できる」、「時期を明記して段取りも決めた」と得意満面で胸を張った。しかし、その直後から、沖縄では疑念や抗議の声が上がった。とりわけ、普天間基地の返還について「2022年度またはその後に返還可能」と書かれたことが、「時期を明示したことにならない」という批判にさらされている。もっともな批判だ。

 皆さんがうすうす感じているとおり、実は、この計画の中に書かれていることは、安倍総理が宣伝している内容とはかなり異なる。よく考えてみれば当たり前のことだが、外交交渉では、一方の当事者だけが特に有利になる合意ができることはまれだ。とりわけ大国同士の交渉ともなればなおさらだ。自由世界の二大大国の日米両国が合意したのだから、そんなに一方的に日本側だけが得点を稼ぐ内容になるはずがないのだ。

 しかし、事前報道では「嘉手納以南の基地の返還時期が明示される」と大きく報道されていた。これは、官僚お得意の情報リークによるマスコミ誘導である。返還時期について具体的な年度を入れることができるかどうかが焦点だとマスコミに思い込ませ、数字だけが一人歩きする環境を作る。夕方の発表として、夜のニュースの時間までにマスコミが内容を吟味する時間を与えない作戦も常套手段だ。そして、真実の合意内容とは関係なく、官僚たちによる「霞が関文学」によるお化粧を施された総理の言葉で、あたかも、返還時期が「明示された」かのような印象を持たせるように、いわば、歪められて発表されたというのが実態だ。

日本は何を得たのか?

 こういう時は、安倍総理の話す言葉ではなく、統合計画の文章そのものをよく分析してみなければならない。そこに書いてあることが本当に時期の明示と言えるのか、そして、今回新たに、米側が新しい義務を負ったのか、つまり日本は本当に何かを得たのかということだ。それとともに、日本が何かをとったのであれば、何かをとられたのではないかということも当然吟味されなければならない。以下、実際に配られた文書を解読してみたい。

 まず、今回発表された統合計画の表題は、「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」である。その中に「基地返還」の文字がないことに気づく。実は、この計画は、基地の返還を目的としたものではない。「返還計画」だと報じたところもあったが、全くの間違いだ。

 文書冒頭の、「第1 はじめに」の「Ⅰ.概観」の第2パラグラフには、「・・・・・・再編を実施することにより、・・・・・・地元への米軍の影響を軽減することとなる」というくだりがある。安倍総理は「沖縄の負担軽減」を目的とした計画であるかのようにこれを強調したが、あくまでも米軍再編が主目的であって、負担軽減は付随的結果に過ぎないのである。しかも、合意の中には、「負担」という言葉は出て来ない。「負担」と言えば、米軍に申し訳ない。「地元への米軍の影響」という中立的な言葉を使い、決して悪いものではないというニュアンスを出した。米国への強い配慮だ。

 また、「概観」の最終パラグラフに「沖縄の住民の強い希望を認識し」という文言が書かれていることに気づくが、この計画は、「沖縄の住民の強い希望」にこたえるためのものではないこともここから読み取れる。「沖縄住民の強い希望」という言葉をわざわざ入れて、それにこたえるかのように装いながら、よく読むと、それは単に「認識」されるだけのもの、という扱いだ。しかも、認識しているのは誰かという主語がない。わざと不明確にされている。ここも米側への配慮であろう。

 さらに、面白いことに気づく。概観の1ページ目に、以下の3つの文章が並んでいる。・・・・・・