特集 TPPへ事実上の協定参加 安倍首相の大きな賭け[TPP決断]

2013年04月22日(月) 毎日フォーラム
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 しかし、首脳会談で野田氏が「すべての物品、サービスを貿易自由化交渉のテーブルに載せる」ことを認めたかどうかを巡って日米両政府の説明が食い違ったため、民主党内で反対論が噴出。結局、同党は交渉参加に至らないまま政権の座から転落した。

 では、自民党は民主党とどこが違ったのか――。

 自民党は昨年の衆院選で「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」と公約した。文案を練ったのは谷垣禎一執行部時代の茂木敏充政調会長、林芳正政調会長代理、高村正彦党外交・経済連携調査会長。原案は「『聖域なき関税撤廃』を前提にしないなら、TPP交渉参加に賛成する」だったが、野党時代に疎遠になっていた農協など農業団体を取り込むため、反対に軸足を置いた表現にあえて書き換えた。思惑通り、民主党政権を見限った農業団体は各地で自民党候補の支援に回った。

 今や茂木氏は経済産業相、林氏は農相、高村氏は自民党副総裁として安倍氏を支える。安倍政権はまさに「TPP布陣」といえよう。

 衆院選に勝利した安倍氏には二つのハードルがあった。日米首脳会談でTPPが「聖域なき関税撤廃」を前提にしていないことを確認できるかどうか。そのうえで党内の反対派をいかに納得させるか。ここでしくじると民主党政権の二の舞いになる恐れがあった。

 JA全中の萬歳章会長が自民党本部を訪れたのは昨年12月20日。政権復帰を前に、TPPに関する安倍氏の意向を探るのが目的だった。だが、安倍氏は公約以上の言質を与えず、萬歳氏を突き放した。「また民主党に投票するんですか」。交渉参加に踏み切って農業団体が反発しても、もはや農業票の有力な受け皿はほかにないと踏んでの強気な発言だった。足元を見透かされた萬歳氏は記者団に多くを語らず、党本部を後にした。

「族をもって族を制す」

 首相就任後の今年1月1日には、東京・富ケ谷の私邸に塩崎恭久政調会長代理を招き、交渉参加に向けた党の体制を話し合った。そして、年始休みを終えた安倍氏はさっそく「電話作戦」を開始する。相手は西川公也元副内閣相。後に自民党「TPP対策委員会」の委員長に起用するキーマンだ。安倍氏は周囲に意味ありげに語っている。「族(議員)をもって族を制す、だよ」

 西川氏は衆院栃木2区選出の当選5回。世界貿易機関(WTO)の農業交渉に党の責任者として携わった経験を持つ農水族だ。09年衆院選では落選したが、今回はTPP反対を鮮明にして農協の全面支援を受け、民主党前職を破って返り咲いた。しかも、安倍氏は小泉純一郎内閣の官房長官時代、郵政民営化担当の副内閣相として反対派の説得にあたった西川氏が強く印象に残っていた。

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