大宅賞受賞『カウントダウン・メルトダウン』著者船橋洋一に藤野英人が聞く【前編】 「菅首相が極秘につくらせた『最悪シナリオ』を入手したとき、この本の取材は始まった」
[左]船橋洋一氏(一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長)、[右]藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス取締役)


藤野: 船橋さんの書かれた『カウントダウン・メルトダウン』(文藝春秋)を夢中になって読みました。膨大な取材を元にした、東京電力福島第一原発の事故についてのノンフィクションですが、読んでいるうちに、これは映画にしたいなと妄想が膨らみました。

船橋: ありがとうございます。映画となると、誰を主人公にしますか。

藤野: 米原子力規制委員会のチャールズ・カストーさんです。菅直人さん(当時の総理大臣)や吉田昌郎さん(当時の福島第一原発所長)など、日本人にしてしまうと、バイアスがかかってしまうように感じるからです。カストーさんは業務命令を受けて日本へやってきた原子力の専門家ですから、切り口も新鮮なものになるでしょう。

 もう少し妄想をお話ししますと、制作はクリント・イーストウッドに担当してもらいたいですね。カストーさん役を誰が演じるのかについては、まだ結論が出ていませんが。

原発事故にヒーローはいらない

船橋: カストーさんは、米原子力規制委員会の委員長(当時)であるグレゴリー・ヤツコさんが、危機中の危機に遭遇した日本へ送り込んだエース中のエースです。一見、ロートルのようでもありますが、あの人がいなければ、今回、日米でギリギリの共同戦線は張れなかったと思います。

 今回、私は何人ものアメリカ人に取材をしましたが、彼が最も魅力的な人間でした。彼は、第一原発の吉田所長、そして第二原発の増田尚宏所長に対して、敬意を持っています。

 先ほど、映画というお話があったのであえて言いますと、もしヒーローを定めるとしたら、この二人になるでしょうね。しかし本来は、ヒーローは不要です。原発事故がなければ、ヒーローになる人も必要ないのですから。これはカストーが言っていた言葉ですが・・・。