迎撃ミサイルの「打ち分け」は可能か!? 北朝鮮のミサイル危機で現実問題となった日本の集団的自衛権
〔PHOTO〕gettyimages

 北朝鮮がミサイルを発射する構えを見せて、東アジア太平洋地域の緊張が高まっている。日本と米国、韓国は日本海と太平洋にイージス艦を展開した。日本は実際に日本めがけて発射された場合には、防衛省など地上に配備した地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)やイージス艦に搭載した迎撃ミサイルSM3で迎撃する方針だ。

 北朝鮮が2月に核実験を成功させたとき、私は当時のコラムで「安全保障をめぐる従来の前提が一変し、まったく新たな次元に突入した」と指摘した。そのうえで「現実世界の展開が政権の想定した政策展開スケジュールを追い越してしまった」とも書いた。

 いまの危機は、まさにこれだ。現実が想定を超えてしまったのである。

 日本政府は危機をまったく想定していなかったわけではない。第1次安倍晋三政権当時に設置された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(柳井俊二座長、安保法制懇)は2008年6月、集団的自衛権の見直しを求める報告書を提出した。その中で、正しく現在の危機を予想していた。だが、報告書は棚上げされ、ようやくいまの安倍政権で再検討が始まったばかりである。

集団的自衛権の行使を認めるかどうか

 報告書が何を書いていたか、確認しておこう。当時の安倍首相が自分の問題意識として懇談会に投げかけた日本の安全保障に関する「4類型」は次の事態である。

1) 公海における米艦の防護(公海上で米軍の艦船が攻撃されたとき、近くで行動している自衛隊艦船が何もしなくてもいいのか)

2) 米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃(ミサイルが日米双方に向かう場合、日本に向かうものは撃ち落とせるが、米国に向かうものは撃ち落とせないでいいのか)

3) 国際的な平和活動における武器使用(PKO活動で他国の部隊が攻撃されたとき、日本の部隊が駆けつけても武器を使用できないでいいのか)

4) 同じ国連PKO等に参加している他国の活動に対する後方支援(他国の部隊が武力を行使するとき、自衛隊が後方支援できないでいいのか)

 今回はまさに2番目で想定した事態である。報告書はさすがに「北朝鮮」という名指しこそ避けてはいたが、08年の時点でいまの危機を予想し、日本はどうすべきかを検討していたのだ。報告書はこう結論づけた。

〈 ミサイルへの対処は、分秒の間に判断する必要があり、さらに、複数のミサイルが日米双方に向かう場合に、我が国に向かうものは撃ち落とせるが、米国に向かうものは撃ち落とせないということになれば、撃墜の可否を即座に判断することは困難なものとなる。したがって、ミサイル攻撃への対応は、単純・明快かつ迅速にとり得るものでなくてはならない。

(米国がミサイル攻撃によって甚大な被害を被れば)我が国自身の防衛に深刻な影響を及ぼすこととなり、また、我が国の安全保障の基盤たる日米同盟を根幹から揺るがすことになる。

 弾道ミサイル防衛は、日米共同で成り立ち、かつ、情報、核抑止力等の面で我が国が米国に大幅に依存しており、従来以上に日米の緊密な連携関係を前提としている。したがって、このような連携関係を離れて我が国のミサイル防衛だけを考えることはできない。

 米国に向かう弾道ミサイルを我が国が撃ち落とせる場合には撃ち落とすべきであるということが我が国の政策目標である以上、この目標を法制的に可能にする方法としては、集団的自衛権の行使を認める以外にないと思われる。 〉

 以上であきらかだが、今回のミサイル危機は、日本が集団的自衛権の行使を認めるかどうかという問題に直結している。北朝鮮はこれまでのように「人工衛星打ち上げ」とは言わず、はっきり日米韓の3ヵ国を名指しして、武力行使の意図を明言している。それに対して、日米韓はイージス艦を出動させ、小野寺五典防衛相が破壊措置命令を出して、PAC3やSM3による迎撃態勢を整えた。

 こういう状況を目の当たりにすれば、報告書が言うように「対応は単純・明快で迅速」でなくてはならないのだから、事態は「日本に集団的自衛権の行使を迫っている」と受け止めるのが自然ではないか。

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