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『複素数とはなにか』
虚数の誕生からオイラーの公式まで
示野信一=著

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複素数はなぜ「究極の数」なのか

 人類がなにかを数えた時、「数」が誕生しました。そして、足し算、引き算、掛け算、割り算と計算が広がるとともに、自然数、整数、有理数、無理数と「数」も広がってきました。さらに想像上の数「虚数」を加え、究極の数「複素数」が誕生しました。複素数はどんな数で、なぜ究極の数なのでしょうか。

まえがき

 複素数(あるいは虚数)とは,-1 の平方根i =√-1 を用いて,a + bi(a, b は実数)の形で表される数のことです.2乗すると-1 になる「虚数」i というのは,奇妙でなじみにくいものでしょう.複素数とは何か,こんなものを考えて何かいいことがあるのか,という疑問に答えることが本書の目的です.

 数については学校で時間をかけて習います.数の足し算,掛け算(九九)のような計算,分数,小数,負の数,無理数,指数の計算など,習う段階では難しかったことも,いつの間にか慣れて身についています.ところが,複素数を高校で習っても,数として受け入れるところまで慣れ親しんでいない人が多いようです.理工系分野で複素数を使っていても,やはり複素数に得体の知れないものという違和感を感じ,親しむとまではいかない人も少なくないと思います.実数は「現実」の数であるのに対して,虚数は「仮想」の数,不合理なものであるという,数学の歴史の中で複素数が受容されるまでに受けた抵抗を追体験しているかのようです.

 複素数への違和感を取り払い,その美しさと有用性を知ってもらうために,本書を執筆しました.読み進む中で,だんだんと複素数に慣れ親んでもらうために,次のようなコースを辿<たど>ります.まず,自然数から整数,有理数,実数,そして複素数へと数の世界が広がっていく流れの中で複素数をとらえ,複素数を四則演算の代数的側面,平面上の点としての幾何学的側面の両面から詳しく見ます.本書でもっとも重要なド・モアブルの定理とその幾何学的理解を用いて,1 のn 乗根とその応用,美しい数式として名高いオイラーの公式eiθ = cos θ + i sin θの証明を与え,複素数の応用のいくつかを取り上げます.

 基礎的なこともその都度説明するようにして,初学者や以前勉強したことを忘れてしまった人が無理なく読めるように配慮しました.一方で,話の筋道をきちんと辿ってしっかり理解してもらうことを重視しました.決して平坦な道のりではありませんが,わかったときの達成感は格別のものです.数式が多くて難しく感じる部分もあるかもしれませんが,難所は保留して先に進み後でじっくり考えるなど,自在に取り組んでもらえればと思います.

 編集者の梓沢修氏には,執筆を支えていただくとともに原稿に対して有益な助言をいただきました.前任の岡山理科大学,そして現在所属する関西学院大学のスタッフ,学生たちからは様々なヒントをもらいました.この場を借りて感謝申し上げます.

目次
第1章 数の広がり
第2章 複素数の四則演算
第3章 複素数の幾何学
第4章 複素数と方程式
第5章 べき乗からオイラーの公式へ
第6章 複素数の応用

著者 示野信一(しめの・のぶかず)
1964年石川県金沢市生まれ。東京大学理学部数学科卒業、東京大学大学院数理科学研究科博士課程修了、博士 (数理科学)。東京都立大学助手、岡山理科大学准教授を経て、現在、関西学院大学理工学部数理科学科教授。著書に『演習形式で学ぶリー群・リー環』(サイエンス社)訳書にハーディ/ライト『数論入門 I, II』(丸善)がある。専門は、リー群の表現論。趣味は山歩きで、休日には六甲山を歩いている。
 
『複素数とはなにか』
虚数の誕生からオイラーの公式まで

著者:示野信一

発行年月日:2012/10/20
ページ数:220
シリーズ通巻番号:B1788

定価(税込):903円 ⇒本を購入する(Amazon)


 
(前書きおよび著者情報は2012年10月20日現在のものです)