ブルーバックス
『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』
「パラグラフ・ライティング」入門
倉島保美=著

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ロジックと認知心理学に基づいた「読ませる文章」の極意

 必要な情報がきちんと伝わる──そんな文章を書くにはパラグラフの概念が重要。欧米では学生時代に徹底的に訓練される「パラグラフ・ライティング」の技法を7つのポイントで分かりやすく解説。今日から使えるテクニック満載!

はじめに

●世界標準の書き方を学ぶ

 本書の目的は、世界標準の文章技法であるパラグラフ・ライティングを学習することにあります。

パラグラフ・ライティングは、論理的な文章を書くための、世界標準の書き方です。パラグラフは、レポートや論文のような論理的な文章に適した考え方だからです(なぜ適しているかは、本書に詳しく説明してあります)。欧米では、このパラグラフ・ライティングを中心とした論理的な書き方を、大学1年生のときを中心に1年以上にわたって勉強します。

パラグラフ・ライティングは、学習して初めて習得できます。パラグラフとは何かを、辞書で調べただけで書けるようになるわけではありません。だからこそ、欧米では、1年以上にわたって勉強するのです。日本では、学校教育でパラグラフを正しく指導していないので、日本人のほぼ全員がパラグラフで文章を書けません。パラグラフ・ライティングを学習しない限り、論理的な文章、世界に通用する文章を書くのは、まず不可能と言っていいでしょう。

文章技術はビジネスを左右する

 文章が効果的に書けるかどうかは、ビジネスを左右しかねません。2つの例をご紹介しましょう。

私は、会社勤めをしていた頃、自社の提案書と他3社の提案書を読み比べてほしいという依頼を受けました。依頼してきた部門は、他社よりも入念に提案書を作成したのに、他社の提案が採用されたことに問題を感じていたのでした。同時に出された4社の提案書を読んで、自社の提案書の問題点を指摘してほしいとのことでした。

4社の提案書を読み比べ、私が「最もよく書けている」と指摘したT社の提案書が、実際に採用されていました。私は、どの提案書が採用されたかは聞かずに読み比べしたのです。T社の提案書だけが、正しい書き方に近い形で書かれていました。もちろん、正しく書かれていたから採用されたのではありません。正しく書かれていたから、内容がよく伝わった結果、採用されたのでしょう。

もう1つ、文章が書けないために大きな問題になった事例として、スペースシャトル・チャレンジャーの爆発事故があります。チャレンジャーが爆発事故(1986年)を起こす前に、NASAでは、Oリングという部品の耐性が低いので交換するよう提案したレポートが、エンジニアから提出されていました。しかし、そのレポートは書き方が悪かったために、事態の深刻度が上層部には伝わりませんでした。その結果、問題のOリングがそのまま使われたため、チャレンジャーは爆発に至りました。レポートが正しく書けていれば、チャレンジャーの爆発は防げたかもしれません。